「職業訓練を受けるなら受講指示じゃないといけないと聞いたけど意味がよくわからない」
そんな方向けに、
「職業訓練を受講指示で受けるための条件と受講指示で得られるメリット」
を詳しく説明していきます。
そもそも職業訓練のことがよくわからなくても大丈夫です。
職業訓練の「受講指示」に関する知識なら、これでもうバッチリです。
それではどうぞ!
職業訓練を受講指示で受けるメリットとは?
「なぜ、職業訓練は受講指示で受けないといけないのか?」
その理由は、受講指示には受講生にとって強力なメリットがあるからです。
このメリットはあまりに強力なので、もし仮に受講指示で受けられないとすると、職業訓練受講自体をあきらめないといけないくらい重要なポイントとなります。
ですから、職業訓練を受ける場合には受講指示が受けられるかどうかを、ぜひ優先して考えたいところです。
以下にその5つのメリットを説明していきます。
1.給付日数の延長
受講指示で職業訓練を受けている期間中は、失業保険が途中でなくなることなく職業訓練終了まで延長されます。
単純化してわかりやすく例を挙げますと、
仮に、失業保険の給付日数が3ヶ月(90日間)もらえる場合に、6ヶ月(180日間)の職業訓練を受けたとします。
この場合に、職業訓練開始から3ヶ月(90日間)までは失業保険を受けられますが、この時点で失業保険をもらい切るので、その後の3カ月間は無収入の期間になってしまいます。
しかし、受講指示で訓練を受けられれば、職業訓練終了までの残り3ヶ月間は失業保険の日数が追加され「訓練延長手当」として同額の失業保険が支給されます。
これによって、職業訓練を終了するまで失業保険をもらい続けることができます。
ちなみに、この訓練延長手当には延長日数の上限はありません。
例えば2年間の長期職業訓練であっても、2年間の職業訓練期間が終了する日まで失業保険を受け続けることができるわけです。
職業訓練が終了する日まで本来の失業保険の日数がまだ残っているという場合は、本来の支給日数で職業訓練が最後まで受講できるわけなので当然ながら失業保険の延長ということは起こりません。
2.給付制限の解除
自己都合で会社を退職した人は、失業保険の手続き後の原則2カ月間は、失業手当がもらえないという「給付制限」が設けられています。
失業保険の手続きはしたものの、失業保険の給付が2ヶ月間以上ストップしたままなので、しばらくは収入がないという状況になります。
しかし受講指示で職業訓練を受けられれば、職業訓練の開始日にはまだ失業保険がもらえない給付制限中であっても、訓練開始日から失業保険の受給が前倒しでスタートします。
つまり自己都合で退職しても、職業訓練を受けることで2カ月間を待たずに失業保険の受給がスタートするわけです。
なお、こちらのメリットも、給付日数の延長と同様に給付制限後に職業訓練が開始するのであれば前倒しスタートということは起こりません。
3.交通費の支給
受講指示になれば、失業保険の支給に加えて自宅から訓練校までの交通費(通所手当)が補助されます。
この通所手当の額は交通手段により異なりますが、最大で月額42,500円が支給されます。
ほぼ実際にかかる交通費が不足することはありません。(片道2キロ以上が対象です)
eラーニングやオンラインといった自宅学習の形式の場合は、交通費の支給は当然のことながらありません。
電車やバスなどの公共交通機関、または自動車通学でも交通費支給の対象になります。
公共交通機関を利用した場合は、1ヵ月の定期券運賃相当額です。
自動車通学の場合は、以下の額が毎月支給されます。
- 片道10キロ未満の場合は3,690円
- 10キロ以上は5,850円
- 地域によっては15キロ以上の場合に8,010円
4.受講手当の支給
受講手当とは、失業保険の給付に上乗せして500円×40日の合計20,000円が支給されるものです。
職業訓練を受けるにあたって、授業料無料に加えて有料のテキスト代などは、この受講手当でかなりの程度充当できます。
訓練受講に伴う自己負担はかなり軽減できます。
5.認定の手続き代行
通常、失業保険を受給するためには4週間に1回の間隔で本人がハローワークに行って失業保険の認定を受けなければ失業保険をもらえません。
受講指示で職業訓練を受ける場合は、
職業訓練校が失業保険の手続きを受講生の代わりにまとめてやってくれるのです。
さらに、受講指示に限ったことではありませんが、職業訓練を受けている期間中は、
訓練を受講していることが求職活動実績
とみなされます。
通常は必要とされる認定日と認定のあいだの2回以上の求職活動(求人への応募やハローワークでの職業相談、就職説明会への参加など)は必須とされません。
受講指示の条件
このようなメリットいっぱいの受講指示ですが、受講指示で職業訓練を受けるためには、
失業保険の受給日数が訓練受講開始の前日の時点でどれだけ残っているか
が要件となります。
さらに、給付制限の有無によって受講指示に必要な失業保険の受給残日数が変わってきます。
以下の表を参考にしてください。
所定給付日数 | 必要な支給残日数(訓練開始日現在) | |
給付制限あり | 給付制限なし | |
90日 | 31日以上 | 1日以上 |
120日 | 41日以上 | 1日以上 |
150日 | 51日以上 | 31日以上 |
180日 | 61日以上 | 61日以上 |
210日 | 71日以上 | 71日以上 |
240日 | 91日以上 | 91日以上 |
270日 | 121日以上 | 121日以上 |
300日 | 151日以上 | 151日以上 |
330日 | 181日以上 | 181日以上 |
360日 | 211日以上 | 211日以上 |
失業保険の残日数が足りない場合の調整は可能か?
受講指示にするために、なんらかの方法で失業保険の支給残日数を減らさないようにすることはできるのでしょうか?
支給残日数を残す方法としては、以下の2つの方法が考えられます。
ただし、どちらの方法も管轄のハローワークが判断する領域です。
「確実な方法ではない」ということをまず前置きしておきます。
・アルバイトをして支給日数を残す
1日4時間以上のアルバイトをしたその日は、失業保険が認定されない日となります。
その日は不認定とされ後送りされますから、支給残日数が後ろにズレていきます。
すると、職業訓練受講開始日には後送りされた分も含めて支給残日数として残っていることになります。
別の言い方をすれば、支給残日数を減らさないことができたともいえます。
ただし、そのようなことは支給残日数を故意に操作したとみなされる場合があり、支給残日数に加えられない可能性があります。
これを良しとするかどうかは、
管轄のハローワークによって判断が異なる可能性があります。
「受けたい訓練コースが受講指示に必要な支給残日数に足りないため、アルバイトをして残日数を調整しよう」
と思うときは、事前にハローワークで確認をしておくとよいでしょう。
なお、アルバイトが週20時間以上でかつ31日以上の勤務になると、雇用保険に加入する働き方(雇用保険の被保険者)となりますが、これは要注意です。
実は、雇用保険に入る働き方をしてしまうと、
「雇用保険の被保険者は職業訓練を受けられない」という要件に引っかかってしまい、場合によってはそもそも職業訓練自体が受けられないことにつながりかねませんので注意が必要です。
・認定日に行かない
4週間に1回の間隔である失業保険の認定日に認定に行かないと、その期間は認定されなかった期間となります。
支給日数がすべて後送りとなるため、職業訓練開始日には、認定されなかった期間の支給日数がまるまる残ることになります。
このような認定日を飛ばすやり方は、故意でないにせよ支給残日数に加えられない可能性が高いです。
受講指示で職業訓練を受けたいなら、支給残日数の要件をクリアしている訓練コースを選ぶほうが確実といえます。
受講指示でない職業訓練の受け方
このように、職業訓練を受けるならできれば受講指示が望ましいわけですが、受けたい訓練コースがあるならコース内容で訓練受講を決めることもぜんぜんありだと思います。
- 専業主婦で久しぶりに再就職するために職業訓練を受けたい
- 短期間を職業訓練でパソコンスキルを身につけたい
など、受講指示の経済的メリットが受けられる受講指示ではないけれど、「無料で受講できるなら職業訓練を受けたい」ということも大きなメリットですので、事情が許せばまったくありだと思います。
無料なので民間講座を受けるよりも経済的に大きなメリットといえます。
受講指示以外の受講形態
受講形態は、受講指示以外に支援指示、受講推薦の2つがあり、職業訓練を受ける場合には必ずこの3つの受講形態のいずれかになります。
そしてハローワークの職業訓練には公共職業訓練と求職者支援訓練の2つがありますが、この職業訓練の種類によっても受講形態は変わってきます。
訓練の種類と受講形態
まず、受講指示・受講推薦・支援指示といった受講形態は、失業保険の受給日数などで自動的に決まります。
ハローワークが任意に判断するわけではありません。
受講指示・受講推薦・支援指示の3パターン
・受講指示の要件に該当すれば受講指示
・受講指示に該当しなければ受講推薦、ただし職業訓練受講給付金の要件に該当すれば支援指示
すべて支援指示(※受講指示とのバイブリット型あり)
公共職業訓練と求職者支援訓練の違いはこちらの記事で詳しく説明しています。
支援指示の定義
求職者支援訓練を受ける場合の受講形態はすべて支援指示となります。
支援指示では、ハローワークで就職支援計画を受けながら受講を進めていくという受講形式になります。
具体的には、ハローワークが毎月、訓練受講中の就職活動計画を立て、翌月に受講生が就職活動計画の報告や出席状況の報告などをハローワークにしていきます。
また、失業保険をもらえない人向けに月10万円等の給付金(訓練受講給付金)を受給しながら職業訓練を受ける場合も支援指示となります。
公共職業訓練、求職者支援訓練どちらの訓練でも、訓練受講給付金を受給しながら訓練を受ける場合はすべて支援指示となります。
まとめますと、支援指示になるパターンは、
- 求職者支援訓練を受ける→支援指示
- 訓練受講給付金を受ける→支援指示
というわけです。
なお、令和4年7月から受講指示に求職者支援訓練も追加されるよう法制度の改正がありました。
受講指示が求職者支援訓練に追加される前は、求職者支援訓練を受講する場合に、たとえ受講指示の要件に該当していても受講指示の経済的なメリットは受けられませんでした。
あくまで支援指示での受講しか選択肢がありませんでした。
そのため、求職者支援訓練で受けたいコースがあっても受講を断念して、受講指示を受けられる公共職業訓練コースに流れるケースが多かったのです。
それが法改正によって、求職者支援訓練でも公共職業訓練と同じ受講指示の経済的なメリットが受けられるようになり、
「支援指示でありながら受講指示でもあるというハイブリット型」ができました。
この法改正によって、求職者支援訓練の受講生数は改正前より確実に増えてきています。
受講推薦の定義
- 失業保険の支給残日数が足りない
- 失業保険をもらいきった
- そもそも失業保険がもらえない
これらのケースは受講指示になりません。受講推薦か支援指示となります。
このうち、
職業訓練受講給付金の要件に該当すれば支援指示になり、
職業訓練受講給付金の要件に該当しなければ受講推薦となります。
求職者支援訓練はすべて支援指示(受講指示とのハイブリット型あり)となりますので、求職者支援訓練では受講推薦という受講形態はありません。
受講推薦の場合は、
- 職業訓練終了まで失業保険は延長されない
- 交通費は出ない
- 受講手当(2万円)は出ない
- 職業訓練受講給付金(月10万円+交通費)は出ない
- 認定の手続き代行はなく認定日にハローワークに行くことが必要
このように、ないない尽くしになります。
もちろん受講料無料で職業訓練を受けられるものの、生活面でかなり苦戦を強いられます。
ですから、受講推薦でしか職業訓練を受けられないとなると職業訓練受講自体を諦めざるを得ないこともあると思います。
受講推薦であっても訓練を受けているあいだは求職活動実績は免除されます。
職業訓練を受けることが求職活動とみなされるからです。
敗者復活?受講推薦から支援指示へ
失業保険はもらえるものの受講指示に必要とされる支給残日数が足りない場合は受講推薦になります。
受講推薦だと、これまで説明したように受講指示のようなメリットはありません。
特に失業保険の延長手当がないため、
「職業訓練を受けている途中で失業保険がなくなってしまう」
というリスクがあります。
ですが、失業保険がなくなるということは「失業保険をもらえない人になる」ということでもあります。
失業保険をもらっているうちは失業保険の受給が優先されるため、仮に職業訓練受講給付金の要件に該当していても職業訓練受講給付金はもらえませんでした。
それが、
失業保険をもらえない人になることで、
失業保険をもらえない人に支給される職業訓練受講給付金がもらえる可能性が出てくるわけです。
もちろん、訓練受講給付金の受給条件を満たしている必要がありますが、条件を満たせば受講推薦から受講支援に変更され、訓練受講給付金を受けながら訓練を受講することができるのです。
この職業訓練受講給付金の支給要件はかなり複雑ですから自分が要件に該当するかどうかハローワークでしっかり確認する必要があります。
はたして受給できるかどうか?
ざっくりと言いますと、一人暮らしであれば比較的受給できる可能性がありますが、家族と同居の場合は受給できる可能性はかなり低くなります。
確実に受講指示になるために
ハローワークの認定
職業訓練を受けるためには、そもそもハローワークに職業訓練受講が必要であると認めてもらわなければ受講すらできません。
「失業保険がそろそろ切れるので、失業保険を延長するために職業訓練を受けよう」
としているような意図が透けて見えてしまうとハローワークで受講を認定してはもらえません。
そのために、
- 自分はなぜこの職業訓練を受けたいのか
- これまでにこんな就職活動実績がある
こうしたことをハローワークの職業訓練相談員に説明できるよう事前に準備しておくとよいでしょう。
受講指示と失業保険手続きのタイミング
受講指示を確実に受けるためには、これまで述べてきたように、失業保険の受給残日数が決め手となります。
そのために、希望する訓練コースの開始日数から逆算して失業保険の手続き時期を調整すれば必要な支給残日数を残して受講指示にすることは可能です。
しかし、希望する訓練コースがいつ開講するかという未来情報はかなり不透明ですし、給付制限の有無も受講指示に影響することから、手続き時期の調整は現実的ではないかもしれません。
ただし長期高度人材コースの開講時期は4月初旬が大半なので、手続き時期を調整したうえで受講指示にもっていくことは可能でしょう。
受講指示になる確率を上げるために
受講指示になるために、まずハローワークで職業訓練相談をしなければいけません。
その場合に、ハローワークから訓練を受講するにふさわしいと認定されなければいけません。
そのためには、失業の受給を延長したいからという理由では絶対にダメです。
職業訓練を受ける必要性を認めてもらわなければいけませんし、しっかりとした就職活動をしていることが必要です。
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まとめ
職業訓練を受けるなら、必ずしもうまくいくとは限りませんが、できれば受講指示で受けることを優先して考えたいところです。
なぜなら、受講指示で受けるメリットがあまりに数多くあるからです。
今では、公共職業訓練だけではなく求職者支援訓練でも受講指示で受けられるようになりました。
職業訓練を受講指示で受けられる可能性が高まっています。
仮に受講指示で職業訓練を受けられない場合でも無料で受けられる職業訓練には大きな魅力があります。