職業訓練の申込みは、申込み時期のタイミングによって大きく経済的なメリットが変わってくることがあります。
失業保険の受給の有無、退職のタイミングなど、様々な要素が絡みますので慎重にタイミングを見極めることが必要です。
これらのポイントを理解し、自身の状況に合わせた計画をたてることがスムーズな職業訓練受講につながります。
この記事では、職業訓練の申込みにかかる5つのポイントを説明していきます。
これで、申込み手続きでもう悩むことはありません。
この記事を書いた人
就職支援カウンセラーとして14年 キャリアコンサルタント、社会保険労務士
1.職業訓練の受講申込から受講開始までの流れ
1.受講したいコースを探す
受講する職業訓練のコースを探します。
ハローワークインターネットサービス(職業訓練検索・一覧)のページでは、職業訓練のコースを、自分の住む都道府県や興味のある分野、募集期間などの項目を指定して検索できます。
自分ではうまく訓練コースを探せない!
という方は、ハローワークの職業訓練相談員に一度聞いてみてもよいです。
自分では見つけられなかった訓練コースを教えてもらえるかもしれません。
2.ハローワークへ求職申込み
住所地を管轄するハローワークで「求職申込み」を行います。
求職申込みに必要な書類が「求職申込書」です。
ただし、この求職登録の記載内容は実に多岐にわたっていて、必要事項を記載するだけでとても大変なんです。
住所・氏名以外にも、希望する仕事内容、学歴、職歴、資格、などかなりの情報を申込書に記載しなくてはいけません。
ハローワークに来所してから求職申込書に記入してもよいですが、記入だけで相当の時間がかかることは覚悟しなくてはいけません。
そこで、来所する前にハローワークインターネットサービスから求職登録をしておけばハローワークに行ってからの流れがスムーズです。
できれば事前に求職登録をしてからハローワークに来所されることをオススメします。
3.ハローワークの専門相談員との相談
求職申込をして初めて職業訓練の相談を受けることができます。
職業訓練制度はけっこう複雑な制度設計になっていて、さらに申込みから受講開始までの手続きパターンも多岐にわたります。
そのためハローワークでは、職業訓練専門の相談員が配置されています。
職業訓練相談の対応は一部の担当者が行なう関係上、相談予約が必要なハローワークもあるようです。
せっかく会社を休んでハローワークに行っても、相談すらできないこともありえます。
事前に職業訓練相談には予約が必要かどうか管轄のハローワークに問い合わせしておくとよいでしょう。
ハローワークで求職登録した後に職業訓練相談員から職業訓練制度の説明を受けます。
受講したい訓練コースが決まっていれば受講申込の書類を受け取ります。
ちなみに求職者支援訓練などは、受講申込みまでに原則最低3回以上の職業訓練相談が必要な場合もあるようですから、できれば募集締切り前に余裕を持って活動したいところです。
また失業保険がもらえない場合などは、失業保険のかわりに「職業訓練受講給付金」が受給できる可能性があります。
併せて相談してみてください。
4.職業訓練校への説明会に参加
訓練コースの説明会は受講申込み期間中に必ず行われます。
実施する会場は、職業訓練校の受講会場であったりハローワーク内で行われます。
訓練校の担当者の説明であったり、施設見学や訓練体験などが実施されることもあります。
何ヶ月も通うことになるので、できれば参加するとよいでしょう。
訓練校の担当者の説明が直接聞けますので、チラシではわからない訓練コースの情報を知ることができます。
さらに説明会で得た情報は、職業訓練の選考会における面接の場面で聞かれる「志望動機の説明」に必ず活かせるはずです。
5.ハローワークに受講申込み
受講したい訓練コースが決まったら、「受講申込書」に必要事項を記入した上で、募集期間内にハローワークで受講申込手続きを行ないます。
応募書類は訓練校によって千差万別です。
1枚の申込用紙を記入するだけでよい場合もあれば、志望動機を記入する用紙に加え受講の同意書、顔写真の添付が必要な場合などさまざまです。
やっぱり早めに応募したほうが、受講したい気持ちが伝わるから合格しやすくなりますか?
そんなことは全くありません。
募集締切り日ギリギリの提出であっても合否にはなんの影響もありませんよ!
ただし、求職者支援訓練では、応募書類を訓練校に原則として募集締切り日までに必着で提出しなければいけません。
募集締切り日ギリギリの提出だと応募自体が間に合わない可能性がありますから要注意です。
募集人数に対して応募人数が少ない場合は開講中止になる場合があります。その場合は、選考会前に受講申込者に開講中止の連絡が来ます。
ちなみに、求職者支援訓練の場合は、以下のような統一様式となっています。
6.選考会を受ける
ハローワークに受講申込した後は、選考日に訓練実施機関による面接や筆記試験(コースによって異なります)を受けます。
応募者数が定員に達していなくても必ず選考会は行われます。
選考会では、筆記試験と面接が行われます。
場合によっては筆記試験を課さず面接のみの選考になる場合もあります。
選考会後、訓練実施機関から1週間以内に合否の通知が自宅に送付されます。
みごと合格した場合は訓練が開講する前にハローワークで手続きをします。
7.訓練受講開始〜訓練期間中及び訓練修了後
求職者支援訓練では、訓練期間中は月1回のペースでハローワークで職業相談を受けます。
訓練修了後に就職が決まっていない場合は、修了後3か月の間、引き続き月に1度はハローワークに来所して、就職に向けた職業相談をうけることになります。
2.職業訓練の受講申込み条件
年齢、性別、未経験
年齢や性別にほぼ制限はありません。
また職業訓練は未経験の方がスキルアップや資格取得をして再就職をめざす制度であるため、未経験であることになんの支障もありません。
失業保険をもらえなくても受講可能か?
失業保険をもらえる、もらえないに関わらず職業訓練は受講できます。
ただし、退職時期や失業保険の手続き時期と職業訓練受講日のタイミングによって経済的なメリットが大きく変わってきますから気をつけましょう。
経済的支援が受けられるか?
失業保険を受けながら職業訓練を受講する場合は、授業料が無料であることに加えて次に説明する4つの強力な経済的支援が受けられます。
この4つのメリットを受けられるかどうかが、安心して職業訓練の受講できるかどうかに関わってきますから、ぜひ確認しておきたいポイントです。
4つの経済的メリットとは?
1.失業保険が訓練終了日まで延長
失業保険の給付日数が訓練期間に応じて延長され、訓練終了まで安心して失業保険を受け取れます。
例えば、失業保険の支給日数が90日の方が6ヶ月の職業訓練を受講したとしましょう。
その方は、本来なら訓練の受講途中で90日の受給が終わります。
しかし、訓練期間終了まで失業保険の給付が追加されますから、最後まで収入が途切れることなく訓練を受講できるというわけです。
2.交通費の支給
自宅から訓練校までの交通費(通所手当)が補助されます。
この通所手当の額は最大で月額42,500円が支給されますので、ほぼ不足することはありません。
3.給付制限の解除
自己都合で離職した人は、通常、2カ月間は失業保険がもらえない期間(給付制限)が設定されます。
そうなると失業保険の手続きはしたものの、しばらくは収入がないという状況になります。
給付制限とは?
会社を自己都合で退職した場合、2か月間、雇用保険(基本手当)をもらえない期間があり、これを「給付制限」といいます。
ちなみに、雇用保険(基本手当)の受給手続をすると、手続きをした日から7日間(待期期間といいます)は失業保険の受給はストップしますが、これは給付制限とは関係なくストップされます。
それが、給付制限のかかる2ヶ月間の期間中に職業訓練が開始された場合は、
訓練開始日から失業保険の支給が開始されるというものです。
たとえば、失業保険の手続きした7日後(待期期間終了後)に20日後のタイミングで職業訓練の受講が開始したとします。
通常なら、自己都合退職の場合は失業保険の受給開始は2ヶ月後になってしまいます。
それが職業訓練開始とともに給付制限は大幅に短縮され失業保険の受給がスタートするわけですから、とてもありがたい経済的支援といえます。
4.受講手当の支給
失業保険の給付に追加して500円×40日の合計20,000円が支給されるものです。
有料となるテキスト代などはこの受講手当でかなりの部分が充当できます。
経済的メリットを受けられる条件
これらの支援を受けるためには、訓練開始日の前日に一定の失業保険が残っていることが必要です。
そして、この経済的支援を受けることを「受講指示」と呼びます。
職業訓練を受ける際に受講指示で経済的支援を受けることは、受講者にとって重要な要素です。
まさに職業訓練を受けるかどうかの「判断の決め手」になるといってもよいでしょう。
特に、失業保険の給付日数が訓練期間に応じて延長されることは、受講者にとって大きな安心となります。
受講指示を受けられる条件とは?
そのためには、職業訓練を受ける場合には、この受講指示になるように退職日や失業保険の手続きの時期を計画的にスケジュールできれば理想的ではありますが、実際には職業訓練開始日に合わせて退職日を調整することは難しいでしょう。
したがって、現実的には、受講指示の対象になるような開始時期の職業訓練コースを選ぶことになることが多いと思います。
受講指示にならない場合は?
ちなみに、受講指示にならない場合とは、職業訓練開始日に、
こんなケースが考えられます。
この場合に、訓練期間中に失業保険の受給が途切れたり、失業保険自体がない、ということになります。
そんな場合は、「職業訓練受講給付金」という給付金を利用できる可能性があります。
受講申込の時期
職業訓練を受講する際には、退職状態や労働時間制限について理解する必要があります。
まず、職業訓練の申し込み時には、通常は退職しているか、退職予定日が決まっている必要があります。
ただし、週に20時間未満の働き方であれば、退職していなくても受講が可能です。
訓練開始日までに離職し、雇用保険未加入の状態にならなければ、実際に訓練を受けることができないので注意しましょう。
また、現在、在職中で離職予定の方でも職業訓練への申し込みは可能です。
ただし、ハローワークによっては、申し込み時点で既に退職済みでなければ申請できない場合もありますのでご注意ください。
職業訓練を受けるためには、少なくとも訓練開始前日までに退職しているか、例外的ですが雇用保険に加入していない短時間勤務の状況であることが必要です。
もし退職日が訓練開始直前で、失業保険の手続きが間に合わない場合はどうなるのでしょうか?
失業保険の手続き(「資格決定」と呼ばれます)は、退職後に退職した会社がハローワークで手続きを行い、「離職票」という書類を発行してもらう必要があります。
この離職票は本人に郵送され、失業保険の手続きに必要です。
離職票が自宅に届けば、それを持ってハローワークで手続きができるわけです。
資格決定の手続きには退職前6ヶ月間の給与を申請書類に記載する必要があり、書類作成に時間がかかるため、手続きには一般的に2週間ほどかかると言われています。
もし訓練開始までに離職票が届かず、ハローワークで手続きが完了しない場合は、訓練開始後に手続きをしに行くことになります。これは少し手間がかかりますね。
その場合は、事前にハローワークに相談してみましょう。
離職票が届いていない状況での失業保険の手続きについては、各ハローワークによって判断が異なる場合があるため、自分の管轄ハローワークに問い合わせることが重要です。
職業訓練受講中のアルバイト
アルバイトをすることはできますが、雇用保険に加入するような働き方はダメです。
具体的には、週に20時間以上の所定労働時間があり30日以上の雇用見込みがあると雇用保険に加入する働き方になり、そのような状態だと職業訓練を受け続けることができなくなります。
ちなみに、訓練受講中に週20時間未満のアルバイトならすることは可能ではありますが、失業保険を受けながら受講する場合は失業保険の受給額が減額されてしまいますから、あまりアルバイトをするメリットがありません。
なお、失業保険を受けられない人が、職業訓練受講給付金を受ける際には、週に20時間未満のアルバイトであれば月収8万円以下にすれば職業訓練受講給付金を受けながら訓練を受けることができます。
失業保険のときのように、アルバイト収入が失業保険の支給額と相殺されることはありません。
職業訓練の受講には様々な条件や制約があるため、申し込む前に自分の状況と条件をよく理解し、ハローワークと相談することが大切です。
職業訓練受講の申込手順
失業保険の手続きとスケジューリング
失業保険を受けながら職業訓練を受講する場合は、受講指示になるような日程の訓練コースを選ぶのがお勧めです。
ちなみに、失業保険の手続きからその後の一連の流れは以下のようになります。
なお、会社から離職票が交付されない場合や、事業主が行方不明の場合等については、住居地を管轄するハローワークにお問い合わせください。
離職票の提出時期に注意
離職票が訓練開始日までに間に合わない場合でも訓練受講は可能です。
ただし、ハローワークによって取り扱いが違う可能性があります。
手続きに関する期限を管轄のハローワークでしっかり確認しましょう。
退職前6ヶ月間にもらう賃金額が失業保険の受給額計算の根拠になりますので退職前の給料額を残業などで増やしておけば失業保険の額を上げることは可能です。
FAQよくある質問
- Q他の訓練コースとの併願はできますか?
- A
複数の訓練コースを同時に応募することはできません。
併願はできませんので、一つずつ応募していくことになります。
ちなみに応募した訓練コースに不合格、あるいは応募者少数で開講されなかった場合は、同時期に応募していた訓練コースはすでに募集終了となり応募はできません。
したがって、訓練コース選びは慎重にする必要があります。
なお例外として、ポリテクセンターなどでは、同じ開講日に複数の訓練コースを展開していることから、受講申込み時に第一希望から第3希望まで複数の希望コースを提出することができます。
- Q連続受講はできますか?
- A
連続受講には制限があり、基本的に1年間の期間を空ける必要があります。
特例として求職者支援訓練の基礎コースを受講後に続けて実践コースを受講できる特例がありますが、基礎コース自体があまりないため連続受講はレアケースといえます。
また、受講者が希望する分野のコースがいつも用意されているわけではないため、計画的な受講が求められます。
- Q定員割れで開講中止されないことがありますか?
- A
せっかく応募しても募集定員より少ない場合は開講中止になることがあります。
ポリテクセンターのような職業訓練を専門に実施している公的教育機関では1人でも開講されますし、民間の教育機関に業務委託された訓練コース(公共職業訓練の委託訓練や求職者支援訓練など)では定員数に対して半分以上の応募が必要な場合もあるなどさまざまです。
- Q訓練コースの受講内容に沿った職種で就職しないといけないの?
- A
基本的には受講する訓練コース内容と職業訓練修了後に再就職する職種は通常は同じになるはずですが実際には必ずしも一致しないこともありますしダメではありません。
例えばWEBデザイナー養成コースを受講しても実際にWEBデザイナーとして就職するケースは必ずしも多いとはいえません。
- Q職業訓練にはどのような種類がありますか?
- A
ハローワークの職業訓練には公共職業訓練と求職者支援訓練の2種類があります。公共職業訓練は失業保険をもらえる方向けのコースであり、求職者支援訓練は失業保険がもらえない人向けのコースです。
とはいっても厳格にすみ分けがされているわけではなく、失業保険をもらえるかどうかにかかわらず、どちらの訓練も受講申込ができます。
- Q職業訓練の受講期間はどのくらいですか?
- A
多くは3ヶ月から6ヶ月の受講期間が一般的ですが、2年間の長期コースも用意されています。
- Q職業訓練の受講時間は?
- A
平日の週5日、9:00過ぎから16:00までの受講期間を設定するコースが多いです。
土日祝、年末年始、お盆期間は休みになります。一部、週3日や1日3時間の短時間コースの設定もあります。
- Q職業訓練で自宅受講コースはありますか?
- A
はい、通学型ではなく、自宅で受けられるeラーニング形式の訓練コースもあります。
時間や場所に制約のある方にとって大きな利点であり、より多くの人が自分のペースで学ぶことができるようになっています。
- Q職業訓練には託児所付きコースがありますか?
- A
はい、受講者のために託児所が用意されたコースもあります。
小さなお子様がいても職業訓練との両立が可能です。
- Q職業訓練は県外でも受講できますか?
- A
はい、居住地の制約はありませんので、住所地ではない県外のコースも受講可能です。
まとめ
職業訓練を受ければスキル向上、資格取得といった再就職に役立つ武器を手に入れることができますが、一方で訓練受講中の生活維持という大事な側面も考慮しなくてはいけません。
職業訓練を申し込む時期によって経済的なメリットが大きく変わってくるなど、失業保険の受給の有無、退職のタイミングなど、様々な要素が絡むので少し複雑です。
ただ単に申し込んでもよいのですが、せっかく受講するなら最大限のメリットを活かして受講したいものです。
これらのポイントを理解し、自身の状況に合わせた計画をたてることがスムーズな職業訓練受講につながります。