職業訓練受講給付金制度の概要
国の重要施策である雇用対策の一つにハローワークの職業訓練制度があります。
その職業訓練を受けやすいように後押しする制度が「職業訓練受講給付金」であり、生活面から次の一歩が踏み出せない方をバックアップしてくれます。
生活面で不安はあるけど職業訓練を受けてみたい!
こうした、職業訓練でスキルアップをして再就職を叶えたい方向けに、訓練期間中の生活を支えてくれるありがたい制度が、「職業訓練受講給付金」となります。
訓練を受けている期間中は、ずっとこの給付金を受け続けることができて、もちろん返還する必要もありません。本当にありがたい制度です。
職業訓練受講給付金の支給を受けるためには、特定の条件を満たす必要があります。
では、この制度の対象者や支給条件、手続きの流れについてこれから詳しく説明していきましょう。
職業訓練受講給付金の対象者
まず前提として、職業訓練受講給付金を受けられる条件として、
職業訓練を受けている期間は、雇用保険に加入するような働き方をしていては、そもそも職業訓練自体を受けることができません。
雇用保険に加入する働き方とは、
「週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用期間が見込める」
働き方となります。
別の見方をすれば、
週20時間未満の働き方であれば職業訓練を受けることは可能です。
ただしほとんどの訓練は平日は毎日訓練が開講されていますから、短時間であっても働くということはかなり制限されると思っておいたほうがよいでしょう。
さらに職業訓練受講給付金は、
「失業保険をもらえない方」
が職業訓練受講給付金の対象者となります。
そのうえで、以下のような方々が職業訓練を受ける場合に職業訓練受講給付金の対象となります。
仕事を退職し再就職を目指している離職中の方
雇用保険に加入するような 働き方(週20時間未満の勤務)をしてこなかった方の場合が該当します。
たとえば短時間アルバイトやフリーランス、自営業者が事業を終了した方々などが該当します。
また、職業訓練開始前には雇用保険に加入していたものの、雇用保険の加入期間が短いため失業保険をもらえない場合も職業訓練受講給付金の対象になります。
また、専業主婦で長期間働いていなかった方や、社会から孤立している引きこもりの方なども受給できる可能性があります。
訓練中に失業保険の受給が終了した方
「職業訓練を受ける際に、失業保険をもらえない方々」
これらの方々が職業訓練受講給付金の対象者となるわけですが、これらの方々には、
- 職業訓練を受けるときには、すでに失業保険をもらいきっている
- 訓練開始後の受講途中で失業保険をもらいきる
方々も含みます。
①では、「すでに失業保険をもらいきった」状態ですから失業保険をもらえない方となり、職業訓練受講給付金の対象になります。
次に、②の「訓練開始後の受講途中で失業保険をもらいきる」という場合を説明します。
失業保険を受けている人が職業訓練を受ける場合、訓練を始める前に失業保険が支給される日数の残りが一定の日数あると、訓練中に本来の支給される残り日数がなくなっても、訓練が終わるまで失業保険が支給されます。
この受講形態のことを「受講指示」といいます。
「受講指示」については、
職業訓練を【受講指示】で受ける条件と5つのメリットを徹底解説
で詳しく説明していますが、訓練が開始するときに一定の支給日数が残っていれば、訓練が終了するまで失業保険が延長される制度です。
しかし、訓練を始める前に一定の残り日数が足りないときは受講指示にならないので、訓練中に残り日数がなくなってしまう場合があります。
この場合は、職業訓練を受けている途中で失業保険がなくなるという無収入の状態になりますが、
失業保険の残り日数がなくなった訓練の受講途中の時点から、職業訓練受講給付金の対象になります。
訓練受講の途中で訓練受講給付金の対象になることは、訓練開始前に分かっていますので、訓練開始前にこの給付金の事前申請をおこないます。
働きながらスキルアップのため訓練を受けたい方
働いている方(週20時間未満に限る)の中でも、一定額以下の収入の非正規雇用者で正社員への転職を目指す場合は受給できる可能性があります。
とはいっても、多くの訓練コースは平日は毎日授業がありますから、働きながら訓練を受けることはかなり限定されてきます。
ちなみに職業訓練受講給付金は、求職者支援訓練の受講生のみが対象だけでなく、公共職業訓練の受講生も対象となります。
職業訓練受講給付金はいくらもらえるか
- 職業訓練受講手当: 月額100,000円
- 通所手当(交通費): 最大42,500円
- 寄宿手当: 月額10,700円(通学時間が往復4時間以上の場合)
職業訓練受講給付金の支給要件
職業訓練受講給付金の支給要件は、以下の通りです。
- 雇用保険被保険者ではない、また雇用保険の失業給付を受給できない
- 収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日全てに出席する
- 世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
- 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
訓練期間中のうち、1ヶ月ごとに毎回支給申請をしていきます。
(要件を満たせば1か月ごとに支給します)
上記の支給要件のうち、主な要件の注意点は以下のとおりです。
①雇用保険被保険者ではない、また雇用保険の失業給付を受給できない
在職中でも訓練を受けることは可能ですが、雇用保険に加入するような勤務状態(週20時間以上)だと雇用保険被保険者になるのでそもそも訓練自体が受けられません。
また、職業訓練開始の時点で、「雇用保険の失業給付を受給できる方」や「すでに受給していて受講指示の方」は失業給付が優先されるので、訓練受講給付金を受けることはできません。
②本人の月収8万以下について:
本人の月収が8万円以下である必要があります。
別の言い方をすれば、月収が8万円以下であれば、職業訓練を受けながらアルバイトなどで働くことは可能ということです。
ただし、その場合には、月収が8万円以下であるとともに、週20時間未満の勤務時間に抑える必要があります。
先に述べたように、週20時間以上の勤務になると雇用保険に加入するような働き方となり、そもそも職業訓練自体を受けることができなくなります。
以下で主な支給要件についてポイントを説明します。
③世帯全体の月収30万以下について
世帯全体の月収が30万円以下であることが要件です。
この「世帯全体」という点がポイントです。
例えば、両親と同居している場合、年金暮らしの両親の年金額も収入になりますから両親の収入だけで要件を外れてしまうことがあります。
ですから実際には、一人暮らしでないと職業訓練受講給付金の要件に該当しないことが多いようです。
- Q世帯の範囲はどの範囲ですか?
- A
同居の家族で親、配偶者(生計を一にする別居の配偶者含む)、子供です。
祖父母や兄弟は含まれません。また、実家で親と一緒に住んでいるが住民票が別という場合でも、同居として扱われます。いくら生計は別といっても合算されます。
なお、特例措置として、
本人収入が月収12万円以下かつ世帯収入が月収34万円以下の場合は、職業訓練受講手当の10万円は出ませんが、施設への交通費(通所手当)だけが支給されることがあります。
④世帯全体の金融資産300万円以下について
受給者本人とその世帯の金融資産が合わせて300万円以下である必要があります。
こちらも、家族と同居している場合は300万以上になることが多いため、給付金がもらいにくい代表的な要件となっています。
また仮に世帯全体で300万円未満であっても、家族の資産(すべての通帳の残高など)を毎回の申請のたびにハローワークに提示しなければなりませんから、家族の理解も必要になってきます。
⑥訓練実施日全てに出席する について
職業訓練への出席要件はとても厳しく問われます。
1ヶ月ごとに、給付金の支給対象期間(支給単位期間といいます)が区切られ、その期間中の訓練実施日全てに出席することが必要です。
それぞれの支給単位期間中に、一度でも訓練を欠席すると、その期間の給付金は支給されません。
欠席1回でも、さらに遅刻や早退であっても不支給となるので、かなり厳しい支給条件といえるでしょう。
ただし、やむを得ない理由により欠席した場合は、欠席した理由が証明できて且つやむを得ない理由と判定された場合は欠席扱いにはなりません。
間違えられやすいのが、最低8割以上の出席が必要という要件です。
この8割というのは、
こうした場合に8割という出席要件が関係してきます。
職業訓練受講給付金においては、各期間中で1回の欠席(やむを得ない理由の場合は除く)でさえ許されません。
出席要件のレベルが断然違いますから注意してください。
育児・介護を行う方や求職者支援訓練の基礎コースを受講する方は、やむを得ないという証明ができない場合でも支給されることがあります。
支給単位期間ごとにハローワークに来所して職業訓練受講給付金の申請と職業相談をしていきます。
その日は授業はなくハローワークに行く日となります。
仮に、その日に来所しなかった場合は、職業訓練受講給付金は今後の受講期間はすべて不支給となってしまいます。
これもかなり厳しい要件といえます。
コメント:
年末年始やGW期間中など、支給単位期間の訓練日数自体が少ないときは、仮に欠席がやむを得ない理由であっても、すぐに8割以上の出席要件を下回ることがありますので注意が必要です。
⑨過去6年以内に職業訓練受講給付金の支給を受けていない について
職業訓練受講給付金の支給を受けるためには、過去6年以内にこの給付金を受けたことがないことが求められます。
これは、制度の乱用や二重受給を防ぐための措置です。
ちなみに、6年以上前に受け取った場合であれば再び支給を受けることが可能です。
つまり、回数制限はないということです。
職業訓練受講給付金のデメリットは?
職業訓練受講給付金の支給を受ける際のデメリットは以下のとおりです。
確実に職業訓練受講給付金の支給が受けられるわけではない
訓練受講中の各審査期間で全出席が必要であり遅刻・早退も許されないという厳しさがあります。
やむを得ない理由であれば欠席できないこともないですが最低8割以上の出席は求められます。
また、収入要件・資産要件もかなり厳しいものです。
家族の収入・資産もすべて提示しなければならず、ボーナス月は収入要件の30万円を超えて支給対象外となることもあります。
訓練受講中の経済的支援は限定的
本人の収入は8万円以下に限定されますから、訓練受講給付金の10万円以外にアルバイトなどで収入を増やすことは限定されます。
限定的な収入では生活が成り立たない方には不向きな制度といえます。
確実に職業訓練自体を受けられるわけではない
給付金を受けるためには、当たり前ですが、職業訓練を受けることがまず大前提になります。
そのためには、ハローワークで職業訓練相談を受け、受講申込をして選考会に参加して合格するという一連の手続きを踏まなければなりません。
また、せっかく訓練の受講申込みをしたものの、定員に対して応募人数が少なく開講されないというリスクもあります。
本人が訓練受講を希望しているだけでは職業訓練を受けることはできないわけです。
まずハローワークから職業訓練を受ける必要があると認定してもらう必要があるのです。
職業訓練受講給付金の手続きの全体の流れ
- ハローワークで求職申込、職業訓練相談
- 訓練コースの選定
- 説明会の参加、受講申込、選考会の参加
- 合格後はハローワークで職業訓練受講給付金の「事前審査書類」の提出
- 訓練受講開始前日にハローワークで「就職支援計画書」を受理
- 職業訓練開始
- 職業訓練開始後はハローワークで職業訓練受講給付金の申請(職業訓練終了まで)
- 職業訓練終了後の就職支援
ハローワークで求職申込、職業訓練相談
自分の住所地を管轄するハローワークで求職登録するとともに、なぜ職業訓練を受けたいのかを訓練相談で伝えなければいけません。
訓練コースの選定
職業訓練を受けるための訓練コースを選定します。
説明会の参加、受講申込、選考会の参加
ハローワークで受講申込を行います。
受講申込書はハローワークに用意されています。
訓練コースによって、受講申込みの手続きは異なります。願書の様式も違いますし顔写真がいる場合、いらない場合など色々です。
受講申込書をハローワークに提出して受講申込みが完了する場合もあれば、ハローワークに必要書類を提出後に受講申込書を訓練校に本人が提出しないといけない場合があります。
どの訓練コースを選ぶかは慎重に選ばなければなりません。
一度申込みをすると就職が決まったなどの理由がないと辞退できないこともあります。
そのために、訓練校の説明会がかならず実施されますのでできるだけ参加したいところです。
合格後はハローワークで職業訓練受講給付金の「事前審査書類」の提出
受講申し込み後、訓練開始までに訓練受講給付金の申請書類を提出し受給資格の審査(事前審査)が行われます。
訓練受講開始前日にハローワークで「就職支援計画書」を受理
職業訓練開始
職業訓練開始後はハローワークで職業訓練受講給付金の申請(職業訓練終了まで)
月1回の間隔でハローワークに行き職業訓練相談と職業訓練受講給付金の申請を行います。
その後、ハローワークで審査が行われ、およそ1週間前後程度ののちに給付金が振り込まれます。
職業訓練終了後の就職支援
終了後も就職が決まっていない場合は、月1回の間隔でハローワークの就職支援を受けます。
就職が決まればハローワークと訓練校に就職決定の届け出を提出して就職支援が終了します。
職業訓練受講給付金の手続き書類
事前審査時の提出書類
事前審査書以外に、住民票、所得証明、通帳、給料明細などの書類提出、マイナンバーカードの提示などが求められます。
毎月の指定来所日の提出書類
訓練校から提出される出席状況報告書や通帳などを毎月のハローワークの指定来所日にハローワークへ提出します。
ハローワークの指定来所日には、訓練開始前にハローワークから交付された「就職支援計画書」で毎月の求職活動計画が指示され毎月の求職活動報告と出席状況の報告をします。
※必要書類の詳細は下記の厚労省サイトでご確認ください。
職業訓練受講給付金に関するQ&A
- Q確定申告は必要ですか?
- A
非課税ですので確定申告の必要はありません。
ちなみに年収130万または180万未満の社会保険の扶養の範囲内(健康保険料・年金保険料の負担なし)とみなされるかどうかの収入根拠には入れないといけません。
- Qボーナス月は世帯の収入が増えますがどうなりますか?
- A
支給対象期間ごとに収入額を判定しますが、ボーナスが振込された日にあたる対象期間はボーナスの金額も含みます。
したがって、通常の対象期間は職業訓練受講給付金の要件に該当していても、ボーナスが支給される期間は要件から外れる場合が出てきます。
- Q訓練受講給付金をもらいながら訓練期間中にアルバイトはできますか?
- A
アルバイトをすることは可能です。ただし、月収は8万円以下で週20時間未満の働きに抑える必要があります。
また、平日は職業訓練が開講されることが多いので、かりにアルバイトをするとしても平日の夜や訓練が開講されない土日祝に限定されることが多いです。
アルバイト探しならこちらのサイトで簡単に検索できます。
・求人ジャーナルネット
こちらの求人サイトの特によいところは、応募情報の記入が必要ないことです。
いちいち応募情報を入力するのって結構面倒なんですが、それをしなくても希望の仕事の条件を登録しておくと、求人情報はメールやアプリのプッシュ通知で案内されます。
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こちらの求人サイトの特によいところは、応募情報の記入が必要ないことです。
- Q職業訓練中は訓練校の近郊に転居して一人暮らしすれば、世帯の収入や金融資産は対象外にすることができますか?
- A
職業訓練を受講するために転居した場合は別世帯とみなされないため世帯の収入や金融資産も要件に含まれます。
- Q世帯収入の上限について、月収25万円、30万円、40万円、など色々な情報がありますがどれが正解ですか?
- A
以前は月収25万円という設定でしたが、コロナ禍の行動制限のあった期間に月収40万円という特例措置の時期がありました。
現在は月収30万円となっており、例外的に、月収34万円までなら職業訓練受講手当の月額100,000円は支給されないが交通費のみ支給されるという特例措置があります。
- Q職業訓練受講給付金の審査は厳しいか?
- A
職業訓練受講給付金の支給を受けるためには、訓練開始前に事前審査を経て、さらに訓練開始後は毎月ごとに審査を受けないといけません。事前審査でOKが出ても毎月の審査が必ず通るとは限りません。
やむを得ない理由以外に欠席が1日でもあれば支給されませんし、やむを得ない理由があっても各期間中に最低8割以上の出席が必要です。
さらに、毎月のハローワークの指定来所日に連絡なく来所しなければ、その後の支給すら受けられません。
そういった点を踏まえると、審査はかなり厳しいと言えるでしょう。
なお、提出書類に虚偽の内容がある場合は不正とみなされ、受給した金額の返還に加えて返還額の2倍の金額の納付を命じられることもあります。つまり、3倍返しになりますので注意が必要です。