はじめに
失業者向けの公共職業訓練と求職者支援訓練って、一体どう違うのでしょうか?
いまから説明する6つのポイントを知ることで、
を明確に得ることができます。
その仕組みや違いはこれから説明していきますが、雇用保険をもらえる、もらえないにかかわらず、あなたは
公共職業訓練と求職者支援訓練どちらも受講可能です。
この記事は2023年の法改正に対応しています。
<この記事を書いた人>
就職支援カウンセラーとして14年 キャリアコンサルタント、社会保険労務士
※この記事ではハローワークからもらえる給付金の正式名称である「基本手当」を、分かりやすくするために「失業保険」と表現しています。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
以前は職業訓練と求職者支援訓練では経済的なメリットの面で大きな違いがありましたが、就職者支援訓練の制度改定により現在は大きな違いがなくなっています。
ただし受講申込みの手続きなどで細かな違いがあります。
では具体的にみていきましょう。
コース設定の違い
公共職業訓練のコース
公共職業訓練には、職業訓練を専門に行なっている施設内訓練と都道府県が民間に委託して実施している委託訓練という2つの種類の訓練があります。
施設内訓練はポリテクセンターが代表的なもので、機械加工、溶接、電気工事士、CADなど、ものづくり系のコースが設定されています。
一方、委託訓練はパソコン事務や経理事務、医療事務などオフィスワーク系の分野からFP、介護、建設系、保育など様々なジャンルのコースが展開されています。
また、家事や育児など家庭の都合で通学できない方向けに自宅で自由な時間帯に受講ができるeラーニングコースや講師の授業を受講生が自宅で受講するオンラインコースもあります。
・eラーニング⇒1週間単位の学習カリキュラムを自由な時間に自宅で学習
・オンライン学習⇒受講生が特定の時間帯に自宅でオンライン授業を受ける
という違いがあります。
求職者支援訓練のコース
求職者支援訓練は、バブル経済の崩壊後に非正規の派遣労働者や長期失業者が増加し、失業保険を受給できない人々への雇用支援策として2011年に導入されました。
公共職業訓練が失業保険を受けている方を対象にしていたため、失業保険をもらえない方向けにできたのが求職者支援訓練です。
資格やスキルを身につけるという点では公共職業訓練と同じですが、求職者支援訓練では求職者の再就職を訓練校とハローワークで手厚くサポートしていくことに重きを置いています。
訓練受講中や訓練終了後の3ヶ月間は、毎月1回、ハローワークに来所し職業相談を受けることが義務づけられます。
訓練コースは公共職業訓練と同様にパソコン・一般事務、医療事務などが含まれ、公共職業訓練にはないトリマーやネイリストなどのコースも提供されています。
基礎コースと実践コースの2つに分かれ、基礎コースは2〜4か月で就職に関する基本的な知識とスキルを提供し、実践コースは3〜6か月で専門的なスキルを習得する訓練コースです。ちなみに大半のコースは実践コースとなります。
また、自宅で受講できるeラーニング学習やオンライン学習のコースが公共職業訓練よりも充実しており、内容はWEBデザインやプログラミング、観光、英会話、パソコン、医療事務などといったコースが用意されています。
さらに職業訓練は通常では連続受講はできず1年間の間隔を空けて受講しなければなりませんが、求職者支援訓練の基礎コースを受けた後にすぐに実践コースを受講できる点なども求職者支援訓練の特徴です。
主な受講対象者の違い
公共職業訓練の受講対象者
主に失業保険を受給している求職者を対象にしていますが、失業保険をもらえない、あるいは失業保険をもらい終わった求職者も受けることができます。
求職者支援訓練の受講対象者
主に失業保険を受けられない下記の方を対象としています。
・失業保険の適用がなかった離職者の方
・フリーランス
・自営業を廃業した方
・失業保険の受給が終了した方
・非正規社員(失業保険未加入)として働きながら正社員への転職を目指す方
つまり、
公共職業訓練は失業保険を受けている求職者を主な対象としているのに対し、求職者支援訓練は主に失業保険を受けていない人々を主な対象者としています。
ただし誤解されやすいのですが、失業保険を受けている人も受けていない人も、公共職業訓練あるいは求職者支援訓練どちらも受講することができます。
なお、「介護労働講習」という職業訓練だけは、あとで説明する受講指示でないと受講できません。
受講期間の違い
公共職業訓練の受講期間
ものづくり系のポリテクセンターでは6ヶ月〜7ヶ月の訓練受講期間が多いのに対し、都道府県が民間の訓練校に業務を委託する委託訓練では3ヶ月間〜6ヶ月間の訓練期間が多いです。
また公共職業訓練には、求職者支援訓練にはないコースとして、都道府県が民間の短期大学や専門学校に委託する長期間の訓練コースがあります。
このコースは、1年間〜2年間といった長期間の訓練になります。
この訓練を「長期人材育成コース」と呼びますが、保育士、介護福祉士などといった国家資格を取得することも可能になるため、再就職の際には強力な武器を身につけることができます。
さらに入学金はもちろん授業料も免除されることから大変魅力的なコースといえますね。
この訓練コースは、訓練生として入学はしますが、普通に一般学生と共に学び、短大卒あるいは専門学校卒の学歴とともに新卒として就職していくわけです。
失業保険をもらえる場合は在学の期間中は失業保険が支給され交通費も支給されますから経済的な不安もなく受講することが可能です。
求職者支援訓練の受講期間
2カ月〜6カ月の訓練期間が多いですが最短2週間のものもあります。基礎的なパソコンコースなどでは2週間から2ヶ月間が多いですがプログラミングやWEBデザインのコースは6ヶ月の期間が多いです。また、受講時間は通常1日6時間程度が多いのですが、1日3時間程度の短時間のコースもあります。
給付金の違い
失業保険を受給する方には、公共職業訓練と求職者支援訓練の給付金に関する違いが以前は存在していました。
しかし数年前に求職者支援訓練の制度改定が行われ、求職者支援訓練においても公共職業訓練と同じ経済的支援が受けられるようになりました。
経済的な支援とは、以下のようになります。
この中でも特に失業保険の延長はめちゃくちゃ大きいメリットです。なぜなら、どれだけ長い期間の訓練でも、本来の給付日数に関係なく、訓練が終了する最後の日まで失業保険を延長してもらえるからです。
経済的な不安なく訓練に集中できるということですね。
これらの経済的なメリットを得るためには、職業訓練を受講指示で受けなければいけません。
実際のところ、受講指示で職業訓練を受けられるかどうかってところがとても重要なポイントになります!
受講指示で受けるには?
訓練開始の前日に失業保険の残り日数が一定数あることが必要です。
詳しくは魅力いっぱいの職業訓練だがメリットとデメリットを見極めよう!で説明しています。
要するに、訓練の受講を開始するときに失業保険の支給日数がある程度残っている事が必要なんですね。
失業保険をもらい受講指示で訓練を受講できる方は求職者支援訓練でも公共訓練と同様の経済的支援を受けることが可能になり、公共職業訓練と求職者支援訓練で給付金の違いがなくなりました。
一方で、失業保険をもらい切った方やそもそも失業保険がもらえない方などには「職業訓練受講給付金」という制度があり、受給要件に該当すれば月額10万円と交通費が訓練期間中、受給できます。
職業訓練受講給付金は、求職者支援訓練の受講生だけでなく、公共職業訓練の受講生どちらも利用できますよ。
受講手続きや失業保険の認定の違い
公共職業訓練の受講手続き
受講申込の応募書類は訓練コースによって異なり、ハローワークへの提出は共通です。一部のコースでは1枚の申込用紙への記入で済む場合もありますが、一部では顔写真の添付や志望動機の記入など、複数の書類が必要となります。提出後はハローワークが手続きを代行してくれます。
求職者支援訓練の受講手続き
全コースで統一様式の応募書類があり、受講申込書+受講希望理由などを記載する応募書類+顔写真が必要です。
本人がハローワークへの提出後にさらに自分で訓練校にも提出することとなります。
厚生労働省HPより
公共職業訓練の失業保険認定
失業保険を受けている場合、通常は月1回の認定日に本人がハローワークに行って認定の手続きが必要です。しかし、公共職業訓練を受講指示で受ける場合は訓練校が受講生の認定手続きを代行してくれます。
訓練校が失業保険の手続きを全部やってくれるので訓練を受けている期間中は、ハローワークに行かなくてもいいんですね!
そのとおりです。なお、失業保険をもらわない方は、そもそも失業保険の認定を受ける必要がないため、認定手続き自体がありませんよ。
<受講指示ではないが訓練開始後も失業保険の受給日数が残っている場合>
失業保険の給付が残っている間は、訓練受講中も月1回ペースで認定日にハローワークに行く必要があります。この場合、求職者支援訓練は月1回ペースでハローワークに相談に行く指定来所日があるので同時に失業認定手続きも行います。
一方、公共職業相談には求職者支援訓練のような指定来所日がありませんので、その日の訓練の授業終了後にハローワークに行って認定を受ける必要があります。
求職者支援訓練の失業保険認定
求職者支援訓練では公共訓練のように訓練校が認定代行手続きを行いません。
したがって失業保険をもらいながら訓練を受講している場合、月1回の認定日に本人がハローワークに行く必要があります。
この日は授業はありませんので授業が欠席になることはありません。
求職者支援訓練では受講中は月1回のハローワーク来所が義務付けられていますので、その日に認定手続きも行なうことになります。
開講される可能性の違い
公共職業訓練の開講
ポリテクセンターなど職業訓練を専門に実施している訓練校なら募集定員に満たない申込数であっても開講されます。
一方、民間に委託されている委託訓練の場合は応募人数が募集定員に比べて少ない場合は開講されない場合があります。
求職者支援訓練の開講
求職者支援訓練は民間に職業訓練を業務委託された訓練ですので、受講生が少ないと運営できません。したがって、応募人数が募集定員に比べて少ない場合は開講されないことがあります。
開講されるかどうか判断の目安は、応募人数が募集定員の半分以上になるかどうかのところが多いようです。
せっかく職業訓練を申し込んだのに受講できない場合もあるんですね
公共職業訓練と求職者支援訓練どちらを選ぶべきか?
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける場合、一定の条件を満たすと、多くの経済的なメリットを受けながら訓練を受けることができます。
この経済的なメリットは、いまや公共職業訓練と求職者支援訓練のいずれを選んでも適用されるようになりました。
一方、失業保険を受けられないが職業訓練を受けたい場合、一定の条件を満たすことで訓練受講給付金という制度を利用して給付金を受けながら訓練を受けることができます。
この制度も公共職業訓練と求職者支援訓練のどちらを選んでも利用できます。
つまり、受講者が失業保険の対象であるかどうかに関わらず、
公共職業訓練と求職者支援訓練のどちらも利用可能で、さらに経済的なメリットも遜色ないということです。
ですから訓練コースを選ぶにあたっては、公共職業訓練と求職者支援訓練の両方から受講したいコースを広く調査し選ぶことが重要です。
職業訓練Q&A
- Q複数の職業訓練を同時に申し込むことはできますか?
- A
いいえ、同時に複数の訓練を申し込むことはできません。一度に一つのコースしか選択できません。ただし、申し込んだコースが不合格になったり開講されなかった場合は、その時点で他の訓練に申し込むことができます。
- Q失業保険をもらいながら職業訓練を受ける場合も、認定日と認定日の間に2回以上の求職活動は求められますか?
- A
職業訓練を受けている間は、求職活動が必要ありません。これは公共職業訓練と求職者支援訓練の両方に適用されます。
- Q訓練プログラムの受講資格に年齢制限や学歴要件はありますか?
- A
業実習付きの訓練では、一部で55歳以下の年齢制限がある場合があります。しかし、多くの職業訓練には年齢制限はなく、学歴要件もほとんどのコースで必要ありません。ただし、例外として長期人材育成コースでは、短大、専門学校への入学となるため高校卒以上の学歴が必要です。
職業訓練の仕組みと概要
そもそも職業訓練って何?
職業訓練は、ハローワークが提供する離職者向けの公共職業訓練と求職者支援訓練の2つに分かれます。「ハロートレーニング(ハロトレ)」とも呼ばれ、再就職に必要なスキルや資格を無料で提供します。
厚生労働省HPより
受講者数は全国で約10万人前後。公共職業訓練の就職率は約8割で、スキル向上や資格取得を通じて再就職支援に大いに貢献しています。
職業訓練で必ず合格を目指したいなら、応募から選考会まで戦略的に進める事が必要です。
以下の記事を参考にしてみて下さい。
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