
職業訓練を履歴書や職務経歴書にどう反映すれば良いか
職業訓練は、短期間で実践的なスキルを身につけられる貴重な学びの場として、多くの人に活用されています。特に再就職やキャリアチェンジを目指す方にとっては、有効な経験や資格取得のステップとなり得ます。
しかし、その職業訓練の経験を履歴書や職務経歴書にどう記載したらよいか、また職業訓練が「学歴」として認められるのかどうかについては、迷う方も多いでしょう。
実際には職業訓練の記載方法に明確な法律上の決まりはなく、採用担当者や応募先の判断に任される部分が大きいため、絶対的な正解は存在しません。
そこで、ここでは職業訓練を応募書類に効果的かつ印象良く反映させるためのポイントを、わかりやすく丁寧に解説します。
職業訓練歴の履歴書への書き方
最も多い悩みは、「職業訓練歴を履歴書の学歴欄に書くべきか、それとも職歴欄に書くべきか」という点です。
結論から言えば、法的に定められたルールはなく応募先ごとに判断が分かれますが、一般的には職業訓練は正規の学校教育とは異なるため、学歴とはみなされません。
したがって、基本的には履歴書の「職歴欄」に記載するのが無難で、正式な学歴に含めないのが望ましいとされています。
なぜ学歴欄ではなく職歴欄なのか
「学歴」とは、文部科学省が定めた学校教育法に基づく幼稚園、小中学校、高校、大学などの正規の教育機関での修了歴を指します。
これに対して、職業訓練校は厚生労働省の管轄で運営されており、学校教育法に基づく「学歴」とは別の位置づけです。
つまり、職業訓練は学歴に含まれず、「正式な教育機関での修了」とは異なる制度であるため、履歴書の学歴欄に記載するのは適切ではない、というのが一般的な見解なのです。
ただし、この機械的な分類に囚われすぎず、応募者の状況や応募先の特徴、訓練内容の有益性に応じて柔軟に書き方を選ぶことが重要です。

応募先がその経験をどう評価するかが鍵となるため、絶対的な正解ではなく「相手に好印象を与える書き方」を心がけるべきです。
学歴欄に書くことが推奨される場合もある
基本は職業訓練歴を職歴に書くことをお勧めしていますが、「学歴欄に記載したほうがよい」と助言するケースもあります。
例えば、最終学歴が古かったり、学歴に空白期間やブランクを見せたくない場合、または学歴欄に記載する内容が少なく物足りない場合に、職業訓練歴を学歴欄に書くことで書類全体のバランスを整える効果があります。
筆者は履歴書は一つの作品だと考えており、応募書類の添削を2,000件以上担当した経験を通じて、こうした工夫が応募者の書類をより魅力的に見せることに繋がることを実感しています。
もちろん、訓練校が短期大学等の正式な学校であれば、学歴欄に記載するのは当然です。
職業訓練の履歴書・職務経歴書への書き方に絶対の正解はなく、自分の状況や応募先の求める人物像を踏まえ、職業訓練の経験をいかに価値あるものとして際立たせるかが最も大切です。
職業訓練で得た実践的なスキルや資格は、立派な「強み」として胸を張って記載・アピールしましょう。
温かみのある言葉で自信を持って伝えれば、きっと採用担当者にも伝わります。
第3の選択肢「訓練歴」
職業訓練の履歴書や職務経歴書への反映方法には、これまでの「学歴欄に記載する」「職歴欄に記載する」という二つの選択肢に加えて、第3の選択肢として「訓練歴」という専用の項目を新たに設ける方法もあります。
この「訓練歴」欄を作ることの最大のメリットは、職業訓練を無理に学歴や職歴のどちらかに分類する必要がなく、複数のキャリア要素をひとつのまとまりとして整理できる点です。
例えば、短期の集中訓練や資格取得、スキル習得の経験を分かりやすく一覧化できるため、採用担当者にとって非常に見やすく、理解しやすい応募書類になります。
ただし、この方法は市販の手書き用履歴書のフォーマットには通常対応していません。
つまり、既製の履歴書用紙には「訓練歴」欄が存在しないため、パソコンで自由に編集・作成できる書類作成ソフトやテンプレートを利用する場合に限って活用できる点には注意が必要です。
記載箇所 | 記載するケース | ポイント・理由 |
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職歴欄 基本はここに掲載 |
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学歴欄 |
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訓練歴欄 パソコン作成書類向け |
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職業訓練の履歴書・職務経歴書への書き方に絶対の正解はありません。自分の状況や応募先のニーズに合わせて、訓練で得たスキルや資格を価値ある強みとして自信を持ってアピールすることが大切です。
記載方法は主に3つあります。
基本は職歴欄に書くことが多く、空白期間を隠しつつ実務経験として示せます。応募先により訓練内容が学歴として評価される場合は学歴欄に書くこともあります。さらにパソコン作成の履歴書なら、訓練歴専用の項目を作って整理・強調する方法も有効です。
状況に応じて最適な方法を選び、職業訓練の経験を魅力的に伝えましょう。

▼ まとめ
履歴書や職務経歴書での職業訓練の記載例
以下では具体的な記載方法と面接でのアピールポイントを解説します。
1. 履歴書での記載方法
(1) 学歴欄に記載する場合
2020年3月 〇〇県立高等学校〇〇科 卒業
2023年4月 〇〇公共職業訓練校 医療事務コース修了 ~2023年9月
(2) 職歴欄に記載する場合
2023年4月 〇〇公共職業訓練校 ITエンジニアコース修了 ~2023年9月
・PythonとJavaのプログラミング基礎を修得
・チームでのウェブアプリケーション開発を経験
(3) 独立したセクションを設ける
【訓練歴】
2023年4月 〇〇公共職業訓練校 介護福祉士コース修了 ~2023年9月
・身体介護、生活援助の実習を経験
2024年1月 △△職業能力開発校 介護予防研修修了 ~2024年6月
・認知症ケアの基本を修得
2. 職務経歴書での記載方法
(1) 訓練内容を具体的に記載する
2023年4月 〇〇公共職業訓練校 医療事務コース修了 ~2023年9月
・診療報酬請求事務の基礎知識を習得
・電子カルテソフトの操作を実践で習得
・医療機関での模擬受付業務を経験
(2) 訓練成果を数字や具体例で示す
グループプロジェクトで医療費明細書作成を指導役で担当
・修了試験でトップ3%の成績を達成
(3) 前職の経験と関連付ける
【職務経歴】
営業職(2018年4月~2023年3月)
・顧客対応やプレゼンテーションで培ったコミュニケーションスキルを活用
・チームリーダーとしてメンバー指導や調整を経験
【職業訓練】
2023年4月 〇〇保育士養成講座修了 ~2023年9月
・保育の基礎知識と子どもとの関わり方を習得
【自己PR】
営業職で磨いたコミュニケーションスキルを基盤に、保護者との信頼関係構築や子どもとの良好な関係づくりに活かせると考えています。
このように期間を統一して記載することで、履歴書・職務経歴書の見た目が整い、応募先に伝わりやすくなります。

職業訓練の経験をただ並べるだけでなく、
「なぜそれを選び、何を身につけたのか」
「どのように活かしていきたいのか」
を自分の言葉で丁寧に伝えることで、応募書類は一気に説得力と魅力を増します。
小さな工夫が、大きなチャンスにつながることをぜひ忘れずに。
まとめ
職業訓練は、履歴書や職務経歴書の記載項目としてだけでなく、自身のスキルや経験を示す重要な要素です。
学歴欄や職歴欄に記載するほか、「訓練歴」という独立した欄を設ける方法もあり、状況に応じて柔軟に工夫することで、より分かりやすく魅力的な応募書類を作成できます。
大切なのは、自分の経験や習得したスキルを正確に伝えることです。
適切な記載とアピールによって、その価値をしっかり反映させ、応募先に理解してもらいやすくしましょう。