この記事では、在職中でも使える【教育訓練給付制度+休暇給付金】と、ハローワークの【職業訓練(ハロートレーニング)】の違いから、選べるコース内容、受講期間、経済的支援、そして見落としがちな受給回数の制限まで網羅的にお伝えします。
教育訓練休暇給付金とは?
教育訓練休暇給付金は、2025年から新設された国の支援制度です。
仕事を一時的にお休みし、無給で長期間にわたり資格や専門スキル取得などの教育訓練を受ける方が、安心して「学び直し」に挑戦できるよう、生活費相当の給付金を支給してくれます。
どんな人のための制度?
- 会社を辞めずに資格や専門スキルを取得したい方
- 生活費など経済的な理由で「長期の学び直し」をあきらめていた方
- 在職のまま、新しいキャリアに挑戦したい方
制度の仕組みを一言でいうと、
「会社に籍を置いたまま、無給休暇でしっかり学び、収入面もカバーしてくれる国のサポート」
これまで「在職中の長期間学び直し」には経済的な壁がありましたが、この給付金によって、生活に困ることなく“キャリアアップや資格取得”にチャレンジできます。
教育訓練休暇給付金の支給要件
教育訓練休暇給付金を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険の一般被保険者であること
- 通算5年以上の被保険者期間があること
- 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間(みなし被保険者期間も含む)があること
- 就業規則等に基づき会社から承認を得て、30日以上の無給の教育訓練休暇を取得すること
- 教育訓練休暇中は収入がないこと
対象となる教育訓練は厚生労働大臣指定の講座の他、大学・高等専門学校・専修学校・各種学校が実施する教育訓練、さらに職業安定局長が指定する職業関連の教育訓練も含まれます。
つまり、実践教育訓練(専門実践教育訓練)のみならず幅広く対象となる点がポイントです。
eラーニング形式の講座も制度対象に含まれています。

今までは在職のまま、長期間しっかり学び直すのはハードルが高かったですが、この制度の登場で「仕事も収入も安心してキャリアアップ」が現実に!
- 退職せず”専門資格を取りたい方
- 生活費が理由で長期学び直しを諦めていた方
- 在職中でも受けられるので、生活やキャリアを中断せずステップアップ可能
- 最大150日分の“失業手当相当”の支給があるため、長期の学び直しも経済的不安を大きく減らせます
- 雇用保険加入歴や会社の協力が必要なため、事前に就業規則の確認・会社への相談を忘れずに
◆ 教育訓練給付制度で選べるコースと給付内容
一般教育訓練
- 期間:1〜6ヶ月
- 費用:3〜15万円程度
- 主な内容:Excel・Word・簿記・医療事務・英会話など
- 給付率:20%(上限10万円)
特定一般教育訓練
- 期間:2〜12ヶ月
- 費用:5〜30万円程度
- 主な内容:宅建士、TOEIC、FPなど
- 給付率:40%(上限20万円)
専門実践教育訓練
- 期間:6ヶ月〜3年
- 費用:30〜300万円程度
- 対象:看護師、介護福祉士、保育士、プログラマー養成ほか
- 給付率: 受講費用の50%(上限年間40万円)
- – 修了+就職でさらに20%プラス
※今回の教育訓練休暇給付金で無休休暇中は失業手当と同額を最大150日間(月15万〜25万円相当)支給
教育訓練給付制度のeラーニング(オンラインコース)
- 一般教育訓練・特定一般・専門実践いずれの区分でも、「eラーニング」「通信制」対応の指定講座があります。
- パソコンスキル、語学、宅建士試験、プログラミング、IT関連、ビジネス全般など多くの通信制・Web講座が給付対象に含まれています。
- 特に働きながら学びたい在職者や、地方・育児等で通学が難しい方に人気です。
- 夜間・土日開催やオンデマンド配信と組み合わせた“社会人対応型”講座も増加中です。
🎓 教育訓練給付制度を利用する条件
1. 雇用保険の加入期間
- 初めて制度を利用する場合は、雇用保険の加入期間が1年以上必要です。
- 2回目以降に利用する場合は、3年以上の加入期間が必要になります。
- 離職者(すでに会社を辞めた人)でも、在職中に加入要件を満たしていれば対象になります。
2. 対象講座を受講すること
- 制度の対象になるのは、国が認定した「教育訓練講座」に限ります。公式サイトやハローワークで検索・相談可能です。
3. 在職中または退職後1年以内に受講をスタートすること
- 離職してからでも利用できますが、その場合は退職から1年以内(特例で最大20か月)に受講開始が必要です。
4. 講座申し込みの前にハローワークで手続きをすること
- 講座申込前にハローワークでの「支給要件の確認」や事前申請が必要で、これを飛ばすと給付対象になりません。
5. 利用回数・利用の間隔もポイント
- 原則、同じ給付区分での利用は1回限りです。
- 2回目以降の利用を希望する場合は、「前回の受給日から3年以上経過していること」が必要です。
- 同じ講座を2回受けることはできません。異なる講座であっても、間隔をあけなければ再利用できません。
📘 利用条件まとめ

「この制度を使えるか自信がない…」という場合は、まずハローワークに相談しましょう。
手続きの流れや対象講座の案内も丁寧にサポートしてくれます。
自分の雇用保険加入履歴が不明な場合でも、ハローワークで確認可能です。
◆ 職業訓練(ハロートレーニング)との違い
教育訓練給付とよく比較されるのが職業訓練です。学び直しやキャリアアップの制度選びで迷う方のために、「職業訓練(ハロートレーニング)」の内容もみていきましょう。
主な分野とコース例(例:東京・大阪・名古屋)

職業訓練は基礎から実技まで幅広い分野に対応。授業料無料、教材費は数千円程度。交通費支給(月上限42,000円程度)、失業保険をもらえない方でも条件を満たせば「職業訓練受講給付金」(月10万円+交通費)も利用可。
失業給付の受給延長に対応。経済的負担なく学べる環境と就職支援充実のため、学び直し・再就職に最適です。詳しくは職業訓練を【受講指示】で受ける条件と5つのメリットを徹底解説
職業訓練のeラーニング(オンライン訓練)
- 全国の「eラーニング」(遠隔・自宅学習型訓練)コースを受講可能。
- IT基礎やパソコン、Webデザイン、ビジネスマナー、事務処理系など在宅受講可能な講座もあり。
- 修了認定や就職支援はオンライン面談やハローワーク相談等で対応。
- 対応は地域・コースにより異なるため、必ず最新情報の確認を

近年、職業訓練でも教育訓練給付制度でも「通学+eラーニング」や「完全オンライン型」講座が増加。IT・医療事務・宅建士など国家資格も自宅で準備可能。通学困難者や自己主導型学習者は積極的に最新コースをチェック。
比較表:教育訓練給付制度 vs 職業訓練
- 職業訓練(ハロートレーニング)は離職者中心、受講料無料・支援充実。再受講に制限あり。
- 教育訓練給付制度**は在職者・離職者対象。幅広いコースを補助。反復利用は不可。
- 教育訓練休暇給付金は在職者対象。無給休暇中の生活費支援。再利用は被保険者期間再蓄積が条件。
教育訓練給付受講のメリットまとめ
- 仕事と学びを両立しやすい
eラーニング・オンライン講座が豊富で自宅や職場から学べる - 費用補助・経済的負担軽減
高額な専門学校・資格講座も条件次第で手厚く給付(最大80%補助等) - 再就職・キャリアアップに直結
実践スキルや国家資格、業界最新ITスキル等が取得可能 - 就職支援・キャリア相談が充実
職業訓練は専任スタッフによる就職支援やセミナー実施あり - 未経験分野や新しい働き方にも柔軟対応
育児や転職活動などライフスタイルに合わせやすい制度設計
ケース別|教育訓練給付制度・職業訓練どちらを選ぶ?
キャリアアップや再就職を目指す際、状況やニーズによって最適な公的制度は異なります。
代表的なケースごとにどちらがおすすめか解説します。
ケース別おすすめ制度
- 仕事を続けながら専門資格をじっくり取得したい
おすすめ:教育訓練休暇給付金+専門実践教育訓練
理由:無給休暇を活用し、長期の学びに集中しながら生活費もサポート - 短期間でスキルアップ、費用補助を受けたい
おすすめ:教育訓練給付制度(一般・特定一般)
理由:短期資格取得講座の費用を20〜40%補助 - 離職して無料で学び直したい
おすすめ:職業訓練(ハロートレーニング)
理由:無料受講、失業給付や交通費支援あり、再就職支援抜群 - オンライン・通信制で受講したい
おすすめ:教育訓練給付制度 or 職業訓練(eラーニング対応) - 育児・介護など時間制限があるが資格を取りたい
おすすめ:職業訓練(通信・eラーニング)
理由:無料受講、失業給付や交通費支援あり、職業訓練受講給付金(月10万円)の受給可、就職支援抜群
ケース別 選択フローチャート
本格的な資格取得希望
+
専門実践教育訓練
- 在職中も受給でき、費用の一部を補助
- 休業中の生活支援給付金も受け取れる
(費用補助希望)
+
教育訓練給付制度(一般・特定一般)
- 現職中も・退職後でも利用可
- 短期取得や費用補助向け
(ハロートレーニング)
- 失業中対象・無料受講
- 雇用保険受給が訓練修了まで延長
- 交通費・受講手当の支給
- 手厚い経済サポートあり
もしくは
職業訓練(eラーニング対応)
- オンライン受講コースあり
- 条件により在職・離職どちらも可能
時間が限られる方
- 通信・eラーニングコースで柔軟に受講可
- 退職後の制度利用
- 手厚い経済サポートあり
教育訓練給付制度は在職中でも退職後でも利用可能。費用補助だけでなく、休業支援(教育訓練休暇給付金)も選択可能です。職業訓練は失業状態の方が対象で、受講中も失業給付(雇用保険)支給が延長されるほか、交通費や受講手当など経済的サポートが充実しています。失業給付をもらえない方でも訓練受講中に条件が合えば月10万円の給付金を受給可能です。
📘 教育訓練給付制度の講座を探すなら
▶ 厚生労働省 教育訓練講座検索システム
全国の教育訓練給付制度対象(一般・特定一般・専門実践)講座を検索可能。
🔗 キーワード・資格名、地域、eラーニング対応など条件検索可 。在職者向け講座も多数掲載。
🧰 職業訓練(ハロートレーニング)の講座を探すなら
▶ ハローワーク職業訓練検索(公式)
全国の公共職業訓練・求職者支援訓練の開講情報を閲覧可能。
🔗 キーワード、コース名、地域、eラーニング対応など条件検索可 。
教育訓練休暇給付金:手続きの流れ
会社相談
休暇・学習設定
進捗報告(月次)
教育訓練給付制度「在職中の体験談」
「職場で新しいプロジェクトが始まり、今後はより高度なパソコンスキルが必要だと感じていました。在職中に“Excel応用講座”を受けることを決意し、教育訓練給付制度を利用。
平日は仕事終わりの夜間コースを選びましたが、慣れないうちは学びと仕事の両立にとても苦労しました。それでも同じく社会人受講者同士で励まし合い、最終的にはスキルも自信も大きくアップ。受講費用は6万円ほどでしたが、申請により約1万2000円が戻りました。
給付手続きはシンプルで、ハローワークの案内も丁寧だったので、安心して学びに集中できました。仕事と両立しながら目標資格を取得できた経験は、今のキャリアの大きな武器です。」
「長年営業職で働いてきましたが、会社の将来性や自分のキャリアを考え、働きながら国家資格を目指すことにしました。
専門実践教育訓練の対象となるIT分野の通信制講座(情報処理技術者試験対策)を2年間、休日や有給休暇を効率的に活用しながら受講しました。
途中、繁忙期との両立は本当に大変でしたが、職場の理解もあり、モチベーションを維持。必要な実習やスクーリングは夏期の長期休暇を活用しました。
総費用は約45万円。専門実践教育訓練給付金を申請し、およそ22万円が戻ってきたことで、経済的にも大きな支えになりました。
仕事を続けながら新しい分野に挑戦できたことで、社内外の評価も上がり、転職や社内昇進にもプラスに働いています。」
教育訓練休暇給付金制度 Q&A(2025年7月時点の最新情報)
- Q給付中に出産や病気などで中断した場合は?
- A
やむを得ない理由(出産、病気等)の場合は最大4年まで延長可能です。その他の理由の場合は再申請や再開は原則できません。
- Q教育訓練休暇給付金は何度でも利用できますか?
- A
1回限りの利用が原則で、利用後は被保険者期間がリセットされます。再利用には再び5年以上の雇用保険加入期間が必要です。連続利用や複数年度の繰り返し利用は不可。
- Q会社が制度を導入していなくても利用できますか?
- A
利用不可。会社の就業規則等制度導入が必須であり、個人申請は認められません。
- Q給付金受給中に退職したらどうなりますか?
- A
原則として受給権は消滅します。給付金は在職者のキャリア支援が趣旨のため。 不当解雇や会社都合の場合は個別にハローワーク判断を受けてください。
- Q休暇給付金利用後に失業保険はもらえますか?
- A
現時点(2025年7月)では、通常の受給資格を満たせば失業給付申請は可能です。休暇給付金と基本手当の二重受給はできず、扱いは運用細則待ちの状況です。
- Q給付金を受けた分、失業保険の給付日数が減るなどのペナルティはありますか?
- A
厚労省の公式説明では、直接的な給付日数減少やペナルティは明示されていませんが、無給休暇期間は雇用保険の通算受給日数にカウントされない見込みです。詳細は今後の公式通知を待つ必要があります。

想定される注意点
- 書類不備や会社の遅延による受給不可事例も想定されるため、開始前にしっかり準備しましょう。
- 制度内容・対象講座・手続きは今後見直される可能性が高く、最新情報のチェックが必須です。
まとめ・制度選びのヒント
- 教育訓練休暇給付金は在職中かつ無給休暇中の生活支援を行う日本初の大型制度で、広範な教育訓練が対象です。
- 教育訓練給付制度は自己負担の再学習を経済的に補助し、3種類のコースで幅広く対応。
- 職業訓練(ハロートレーニング)は経済支援が厚く、無料で再就職直結の学びを提供。ただし主に離職者向け。