
SNSや動画広告、Web検索で、次のような宣伝を見かけたことはありませんか?
退職を考えている人や、すでに退職して生活費に不安を感じている人にとって、こうした広告は魅力的に見えるかもしれません。
一方で、「本当に受け取れるのか」「高額なサポート費用を払って大丈夫なのか」と不安になるのも自然なことです。
結論からいうと、
退職給付金サポートを利用しただけで、失業保険の受給額や給付日数が増えるわけではありません。
一方で、広告に使われる「失業保険300日」という数字自体は、制度上あり得るものです。
また、公共職業訓練などでは、一定の条件を満たすことで、通常の所定給付日数を超えて基本手当の支給が続く場合もあります。
大切なのは、広告の数字を一律に疑うことではなく、どの制度の、どの条件を満たした場合の数字なのかを確認することです。
この記事では、「失業保険300日」「最大300万円」などの広告表現の仕組み、契約前に確認したいこと、自分で申請する方法、公的な支援制度について解説します。
退職給付金サポートを利用するかどうかを判断する前に、まずは「自分がどの公的制度の対象になるのか」「広告の金額や日数にはどのような根拠があるのか」を確認しましょう。
それではどうぞ!
この記事で使う言葉
制度の名前がいくつも出てくるため、先に言葉を整理しておきます。
| この記事での呼び方 | 意味 |
|---|---|
| 失業保険 | 雇用保険の「基本手当」のこと。一般に「失業保険」「失業手当」と呼ばれています。この記事では同じものとして扱います。 |
| 所定給付日数 | 基本手当を受け取れる日数の上限。離職理由・年齢・雇用保険の加入期間で決まります。 |
| 傷病手当金 | 病気やけがで働けないとき、加入している健康保険から支給されるお金。雇用保険とは別の制度です。 |
| 特定受給資格者・特定理由離職者 | 倒産・解雇などで離職した人(特定受給資格者)や、やむを得ない理由で離職した人(特定理由離職者)の区分。給付日数や給付制限で有利になる場合があります。 |
| 就職困難者 | 障害などにより就職が特に難しいと認められる人の区分。所定給付日数が長くなります。 |
| 訓練延長給付 | 公共職業訓練の受講指示を受けた場合に、訓練が終わるまで基本手当が延長される制度。 |
退職給付金サポートは怪しい?広告を見る前に知っておきたいこと
「退職給付金」は公的制度の正式名称ではない
「退職給付金サポート」や「退職給付金コンサル」という言葉を見て、退職すれば国からまとまったお金を受け取れる制度があると思う人もいるかもしれません。
しかし、「退職給付金」という名前の公的給付制度があるわけではありません。
こうしたサービスでは、主に次のような公的制度を組み合わせて説明している場合があります。
| 制度 | どのようなときに受け取れるか |
|---|---|
| 雇用保険の基本手当(失業保険) | 働く意思と能力があり、求職活動をしているものの、就職できていない場合 |
| 健康保険の傷病手当金 | 病気やけがで仕事を休み、給与を受けられないなど、所定の要件を満たす場合 |
| 公共職業訓練の訓練延長給付 | 基本手当の受給資格がある人が、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練を受け、所定の条件を満たす場合 |
これらは、それぞれ支給条件や申請先、支給期間が異なる制度です。
サポートサービスを利用すれば新しい給付金が発生するわけではなく、本人が公的制度の受給要件を満たしているかどうかが重要になります。
退職給付金サポートに申し込めば、普通に退職するよりも多くお金をもらえるんですか?
申し込むだけで給付金が増える制度ではありません。大切なのは、どの公的制度の対象になるかを確認することです。広告の金額だけで判断せず、受給条件を確かめましょう。
「失業保険300日」「最大300万円」は誰でも受け取れるのか
退職給付金サポートの広告では、このような過激な表現を見かけることがあります。
こうした広告を見ると、自分も同じ金額を受け取れるのではないかと期待してしまうかもしれません。
しかし、実際に受け取れる金額は、退職前の賃金、年齢、雇用保険の加入期間、離職理由、健康状態などによって異なります。
また、300日という給付日数も、すべての退職者に適用されるものではありません。
例えば、基本手当の日額が6,000円で、仮に300日分を受給できたとすると、計算上は次の金額になります。
6,000円 × 300日 = 180万円
広告で示される金額は、このように給付日数と日額を掛け合わせて算出している可能性があります。
ただし、これは計算例です。実際の日額は退職前の賃金などをもとに決まり、年齢などによる上限・下限もあります。300日分の受給が認められるとも限りません。
「最大300万円」という表示についても、傷病手当金や基本手当など、複数の制度による給付を別々の期間で受け取る想定で合算した金額である可能性があります。
その場合も、各制度の受給条件を満たすことが必要です。
すべての給付を受けられるとは限らず、広告に記載された最大額が自分の受給額になる保証もありません。
広告の金額を見るときは、次の点を確認しましょう。
広告の最大額だけで判断せず、自分の状況に当てはめて考えることが大切です。
サポートサービスはすべて詐欺なのか
退職給付金サポートを提供するサービスが、すべて詐欺や違法なサービスというわけではありません。
制度の説明や申請手続きの支援を行うサービスもあります。
一方で、広告の見せ方や契約内容、勧誘方法には注意が必要です。
特に、次のような説明を受けた場合は、契約前に慎重に確認しましょう。
公的給付の可否や金額を決めるのは、制度を所管する機関です。
民間サービスが契約したからといって、受給資格や給付日数を自由に変更できるわけではありません。
広告の金額よりも、自分がどの制度の受給条件を満たしているのかを確認することが大切です。
1-4. 公的機関も申請サポートに注意を呼びかけている
失業保険の申請サポートについては、国民生活センターが注意喚起を行っています。
この注意喚起は、厚生労働省・消費者庁・国民生活センターが共同で作成した啓発資料としても公表されており、各地のハローワーク(労働局)でも案内されています。
2025年12月3日に公表された注意喚起では、次のような相談が目立っているとされています。
これらは、申請サポートを提供するサービスすべてに当てはまるわけではありません。
しかし、広告で示された金額だけを信じて契約すると、想定した給付を受けられないまま費用がかかる可能性があります。
不安がある場合は、契約前にハローワークへ受給条件を確認し、契約や解約などの消費者トラブルについては消費生活センターなどに相談しましょう。
参考:国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意―不正受給を促すかのようなケースも!―」
失業保険300日を受給できる人とは?給付日数の仕組み
一般的な退職者の失業保険は何日分?
失業保険と呼ばれる雇用保険の基本手当は、退職すれば一律に300日分受け取れる制度ではありません。
一般的な自己都合退職などの場合、基本手当の所定給付日数は、雇用保険の加入期間などに応じて原則90日・120日・150日です。
会社の倒産や解雇などによる離職では、年齢や加入期間などの条件によって、所定給付日数が90日から330日となる場合があります。
一方、就職が特に困難な人として認定された場合には、別の給付日数が適用されます。
| 区分 | 所定給付日数の目安・範囲 |
|---|---|
| 一般的な自己都合退職など | 90日・120日・150日 |
| 倒産・解雇などによる離職 | 90日~330日 |
| 就職困難者 | 条件により150日・300日・360日 |
※実際の日数は、離職理由、年齢、雇用保険の加入期間などによって決まります。すべての人が表の最大日数を受給できるわけではありません。
広告で「300日受給できる」と説明されていたら、まずは、どの受給区分を根拠にしているのかを確認しましょう。
病気を理由に退職した場合も、300日分の失業保険を受け取れるんでしょうか?
病気を理由に退職したことと、300日分の基本手当を受給できることは別です。離職理由の区分だけでなく、「就職困難者」に該当するかどうかなど、制度ごとの条件を確認する必要があります。
「特定理由離職者」と「就職困難者」は別の区分

病気やけがなどを理由に退職した場合、ハローワークの判断によって「特定理由離職者」に該当することがあります。
また、本人が契約更新を希望したのに有期雇用契約が更新されなかった場合なども、一定の条件を満たせば該当する可能性があります。
ただし、特定理由離職者に該当したからといって、基本手当を300日受給できるわけではありません。300日給付に関係する別の区分として、「就職困難者」があります。
広告で「300日」と説明されている場合、多くはこの就職困難者を根拠にしていると考えられます。
就職困難者とは?
就職困難者とは、障害などの事情により、一般の求職者と比べて就職が特に困難であると認められる人を指します。
主に、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人など、障害のある人が対象になります。
このほか、保護観察中の人や、社会的事情により就職が著しく阻害されている人なども対象となる場合があります。詳しい範囲や判断の基準は、ハローワークで確認してください。
病気の経験があることや、医師の診断書を取得したことだけで、自動的に就職困難者に認定されるわけではありません。
就職困難者に該当する場合、年齢や雇用保険の加入期間などの条件によって、基本手当の所定給付日数が一般の離職者より長くなります。
雇用保険の加入期間が1年以上ある場合、所定給付日数は原則として次のように区分されます。
| 年齢 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 45歳未満 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 360日 |
※加入期間が1年未満の場合は150日となるなど、条件によって異なります。実際の適用についてはハローワークで確認してください。
ここで重要なのは、病気やけがで退職した人が、全員就職困難者になるわけではないという点です。
医師の診断書や意見書があれば必ず認定されるわけではなく、本人の状況や制度上の要件を踏まえて判断されます。医師の書類の役割については、3-2で詳しく説明します。
次の3つは、目的も認定要件もそれぞれ別の制度・区分です。
「300日受給できる」と説明された場合は、どの制度の、どの認定区分を根拠にした説明なのかを確認しましょう。
失業保険は「働けない状態」では受給できない
失業保険の基本手当を受けるには、原則として、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できていないことが必要です。
そのため、病気やけがによって、すぐには働けない状態にある場合、基本手当をそのまま受給することはできません。
病気などで30日以上続けて働けない場合には、ハローワークで受給期間の延長を申請できることがあります。回復して働ける状態になった後、ほかの要件も満たせば、基本手当の受給を目指せます。
ここで注意したいのは、「働けない状態」と「働ける状態」では、利用する制度が異なるということです。
病気で働けない期間は健康保険の傷病手当金などが関係する一方、基本手当は、働ける状態で求職活動を行う人を対象とする制度です。
離職理由による給付制限や受給期間なども関係するため、自分の状況をハローワークに伝えて確認することが大切です。
働けない間は傷病手当金を受け取り、回復してから失業保険を申請する、という考え方ですか?
そのような流れが考えられる場合はあります。ただし、傷病手当金の継続給付にも条件があり、回復後に基本手当を受け取る場合も別の要件があります。両方を必ず受給できるわけではないので、健康保険とハローワークの両方に確認しましょう。
給付日数と受給できる期間は違う
失業保険については、「300日分受給できる」という説明だけでなく、いつまでに受給する必要があるかも確認しておきましょう。
基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。ただし、所定給付日数が330日や360日の人などには、受給期間に関する特例があります。
また、病気やけがなどで30日以上続けて働けない場合には、要件を満たせば受給期間を延長できることがあります。
延長できる期間は最長3年で、本来の1年と合わせると、離職日の翌日から最長4年の間に受給できる計算になります。
延長の申請には期限があり、原則として「働けなくなって30日が経過した日の翌日以降、1か月以内」に手続きが必要とされています。
期限を過ぎると延長が認められない場合があるため、働けない状態になったら早めにハローワークへ相談しましょう。
期限や取扱いは見直されることがあるため、最新の案内も確認してください。
ただし、受給期間の延長と、所定給付日数そのものが増えることは別です。
延長しても、受け取れる日数は変わりません。
受給手続きを始める時期が遅くなると、所定給付日数を残したまま受給期間が終わり、すべての日数を受給できない場合があります。
退職後に病気などで働けない期間がある人は、受給期間の延長が必要かどうかも含め、早めにハローワークへ相談しましょう。
2-5. 自己都合退職の「給付制限」は2か月から1か月に短縮された
自己都合で退職した場合、基本手当は申請してすぐに受け取れるわけではありません。
求職の申し込み後、7日間の待期期間に加えて、「給付制限」と呼ばれる期間があり、その間は基本手当が支給されません。
この給付制限は、2025年4月の制度改正で、原則2か月から原則1か月に短縮されました。
ただし、過去5年以内に自己都合退職を繰り返している場合などは、給付制限が3か月になることがあります。
また、離職前や離職後に、一定の教育訓練を自ら受けた場合には、給付制限が行われないことがあります。さらに、ハローワークから公共職業訓練の受講指示を受けた場合は、給付制限が解除されます。
会社の倒産・解雇などによる離職や、特定理由離職者に該当する場合は、原則として給付制限はありません。
広告の「すぐにまとまって受け取れる」という説明を見たときは、自分の離職理由で給付制限があるかどうかも確認しておきましょう。
いずれにせよ、仮に給付制限がなくても、すぐに失業給付を受給できることはありません!
退職給付金サポートはどうやって給付額を大きく見せるのか
傷病手当金から失業保険へ、という説明の仕組み
退職給付金サポートの中には、傷病手当金と失業保険の基本手当を組み合わせた受給の流れを説明するサービスがあります。
例えば、病気やけがで働けない人について、次のような流れを想定している場合があります。
- 在職中に、実際に体調不良があって医療機関を受診し、医師が療養を必要と判断する
- 実際に働けない状態で、健康保険の傷病手当金の要件を満たせば申請する
- 退職後も、所定の条件を満たせば傷病手当金の継続給付を受ける
- 回復して働ける状態になった後、失業保険の基本手当の受給要件を満たせば求職活動を始める
このような流れ自体が、すべて不正というわけではありません。実際に病気やけがで働けない人が、制度の条件に従って申請することは可能です。
ただし、誰もがこの流れを利用できるわけではありません。傷病手当金と基本手当では、求められる状態や受給要件が異なります。
傷病手当金を受け取るための条件
傷病手当金は、業務外の病気やけがで仕事を休み、療養のために働けず、給与を受けられないなどの要件を満たした場合に、加入している健康保険から支給される給付です。
支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です。ただし、すべての人が1年6か月分を受け取れるわけではありません。
退職後も継続して受け取るには、原則として次の条件を満たす必要があります。
傷病手当金の継続給付で最もつまずきやすいのが「退職日の出勤」です。退職日を決める前に、加入先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)へ確認してください。
傷病手当金と基本手当は同じ期間に受け取れる?
ここも重要なポイントです。
傷病手当金は、病気やけがで働けない状態を対象とします。一方、基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしている人を対象とします。
そのため、同じ期間について、働けない状態を前提とする傷病手当金と、働ける状態を前提とする基本手当を、同時期に両方受け取れるわけではありません。
傷病手当金を受け取った後、回復して働ける状態になり、基本手当の要件を満たして受給するという流れは考えられます。
ただし、個別の受給可否や調整については、加入している健康保険やハローワークに確認が必要です。
広告で複数の給付金の合計額が示されている場合は、どの制度を、どの期間に、どの条件で受け取る想定なのかを確認しましょう。
オンライン診療や医師の意見書は何のために使われる?
一部のサポートサービスでは、オンライン診療や医師の意見書、診断書などについて説明している場合があります。
オンライン診療そのものは、適切な条件のもとで行われる正規の診療方法です。オンライン診療を利用したからといって、不正になるわけではありません。
ただし、診療では、医師が患者の症状や状態を確認し、医学的に判断する必要があります。
オンラインでの診察が適切でないと判断された場合には、対面診療を勧められることもあります。
メールやチャットで症状を伝えるだけで、診察を受けずに診断が確定するわけではありません。
また、医師の書類には、用途の違いがあります。
同じ医師の書類であっても、それぞれの制度で確認する内容や要件は異なります。
医師の書類を取得すれば、傷病手当金が必ず支給される、特定理由離職者に認定される、あるいは基本手当を300日受給できる、というわけではありません。
書類を取得するだけで、次の制度や区分が自動的に適用されることもありません。
医師には実際の症状や生活・就労状況を正確に伝え、必要な診察や判断を受けることが大切です。
オンライン診療を利用して医師の書類をもらうこと自体が、問題になるわけではないんですね?
はい。オンライン診療そのものが問題なのではありません。実際の症状を医師に正確に伝え、医師が医学的に判断することが大切です。書類の取得や給付金の受給を約束するような説明には注意しましょう。
退職給付金サポートに潜む4つのリスク
退職給付金サポートのすべてが違法・詐欺というわけではありません。
ただし、広告の説明と実際のサービス内容が異なる場合や、不適切な申請を促される場合には注意が必要です。
リスク①|契約しても給付額が増えるとは限らない
民間のサポートサービスを利用したからといって、基本手当の給付額や所定給付日数が自動的に増えるわけではありません。
受給額や日数は、法律上の条件に基づいて判断されます。サポート事業者が関わることで、行政機関の判断そのものが変わるわけではありません。
国民生活センターには、サポートを利用すれば給付額が増えると期待して契約したものの、実際には期待した給付を受けられなかったという相談が寄せられています。
契約を検討する場合は、次の点を確認しましょう。
リスク②|事実と異なる申請を促される可能性がある
特に注意したいのは、実際の体調や退職理由とは異なる内容で申請するように促されるケースです。
国民生活センターの注意喚起では、うつ病などのメンタルの不調がないにもかかわらず、指定のクリニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導があったという相談が紹介されています。
病気やけががある場合に、医療機関で診察を受け、実際の状態について医師に相談すること自体は問題ありません。必要な書類を取得することも問題ありません。
しかし、給付を受けることだけを目的に、実際にはない症状を伝えたり、働ける状態なのに働けないと説明したり、事実と異なる退職理由を説明したりすることは避けなければなりません。
例えば、次のような勧誘には注意しましょう。
診断や給付の判断は、医師や制度を所管する機関が、それぞれの基準に基づいて行います。
サポートサービスの説明に従うことよりも、実際の症状や退職の経緯を正確に伝えることを優先しましょう。
事業者から虚偽の申告や書類の改ざんを勧められた場合は、指示に従わず、申請前にハローワークや加入している健康保険の窓口へ確認しましょう。
リスク③|不正受給が発覚すると返還・納付命令などの対象になる
雇用保険の基本手当などを、偽りその他不正の行為によって受給した場合、不正行為があった日以降の給付は支給されず、不正に受給した額の返還が命じられます。
悪質なケースでは、返還命令に加え、不正受給額の2倍以下の金額を納付するよう命じられることがあります。
返還額と納付額を合わせて、受給額の最大3倍となる場合があるため、「3倍返し」と呼ばれています。
また、事情によっては刑事責任が問われる可能性もあります。
ただし、すべての誤記や手続き上のミスが、直ちに同じ処分になるという意味ではありません。実際の行為や事情に応じて判断されます。
重要なのは、民間業者に言われたからといって、申請者本人の責任がなくなるわけではないという点です。
申請書類には、実際の退職理由・体調・就労状況などを正確に記載してください。判断に迷う場合は、提出前に公的窓口へ確認することが大切です。
リスク④|高額な費用や解約トラブルが発生する可能性がある
サポートサービスを契約する場合、給付額だけでなく、料金体系や解約条件を確認する必要があります。
例えば、契約時には安く見えても、後から成功報酬や追加費用が発生する場合があります。
また、契約後に解約を申し出たところ、事業者に認められなかったり、高額な違約金を請求されたりしたという相談も国民生活センターに寄せられています。
「成功報酬型」「返金保証」と書かれていても、すべての費用やリスクがなくなるとは限りません。
広告の文言だけで安心せず、契約条件を具体的に確認しましょう。
退職給付金サポートは違法?社労士・弁護士との関係
民間サポートのすべてが違法というわけではない
退職給付金サポートを提供する事業者が存在するからといって、そのサービスがすべて違法になるわけではありません。
一般的な制度情報を提供することと、報酬を得て個別の手続きを引き受けることは、区別して考える必要があります。
一般論としては、次のように整理されます。
| 業務の内容 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 制度の一般的な説明・情報提供 | 特別な資格がなくても行える。 |
| 報酬を得て、雇用保険などの申請書類を作成したり、手続きを代行したりする | 社会保険労務士(社労士)の業務とされており、社労士でない人が報酬を得て行うと、社会保険労務士法に違反するおそれがある。 |
| 報酬を得て、法律上のトラブルについて代理・交渉したり、法律相談に応じたりする | 弁護士の業務とされており、弁護士でない人が行うと、弁護士法に違反するおそれがある。 |
※上記は一般的な整理です。実際に違法かどうかは、事業者が具体的に何を行っているかによって判断されます。
事業者の名称が「コンサル」「サポート」であっても、実際に行っていることが上記の業務にあたるなら、資格の有無が問題になります。
反対に、情報提供や助言にとどまっているなら、直ちに違法とはいえません。
そのため、「コンサルだから違法」「サポート業者だから合法」と一律に判断するのではなく、契約内容と業務範囲を確認しましょう。
なお、失業保険の申請は、本人がハローワークで自分で手続きできます。
申請に民間業者や資格者が必須というわけではありません。
契約前に確認したい3つのポイント
- サービスの範囲:制度の一般的な説明なのか、個別の申請支援なのか。
- 担当者の資格:どの資格を持つ人が、どの業務を担当するのか。
- 料金と責任:申請内容の確認、契約解除、トラブル時の対応が明確か。
資格があることだけで、受給が保証されるわけではありません。また、資格がないことだけで、提供するすべてのサービスが違法になるわけでもありません。
不審な説明を受けた場合は、契約を急がず、公的な相談窓口や必要に応じて専門家へ確認してください。
高額コンサルに頼る前に確認したい公的な支援制度
退職後の生活費に不安がある場合、民間サポートに申し込む前に、自分が利用できる公的制度を確認することをおすすめします。
ここでは、基本手当、傷病手当金、職業訓練について整理します。
方法①|ハローワークで離職理由と受給条件を確認する
自己都合退職であっても、実際の事情によっては、特定理由離職者などに該当する可能性があります。
例えば、病気やけが、家庭の事情、有期雇用契約の更新に関する事情などが、制度上の判断に関係する場合があります。
また、倒産・解雇などの場合は、特定受給資格者に該当する可能性があります。
ただし、本人が希望すれば必ず認定されるわけではありません。離職理由や雇用保険の加入期間などを踏まえ、ハローワークが判断します。
離職票の記載内容に疑問がある場合や、退職理由について説明したい事情がある場合は、事実を整理して窓口へ相談しましょう。
退職理由や受給条件を確認するために、高額なサポート契約を先に結ぶ必要はありません。
まずは、ハローワークで自分の状況に当てはまる制度を確認しましょう。
方法②|本当に病気やけがで働けない場合は傷病手当金を確認する
傷病手当金は、業務外の病気やけがによって働けず、給与が十分に支払われない場合などに、加入する健康保険から支給される制度です。
支給期間は、同一の傷病について支給開始日から通算して1年6か月です。
退職後も継続して受給するための条件(被保険者期間・退職日の出勤など)は、3-1で詳しく説明しています。
病気やけがのためにすぐ働けない人は、「いつでも就職できる能力」が必要な雇用保険の基本手当とは受給条件が異なります。同じ期間について、両方を無条件で受けられると考えないようにしましょう。
実際に体調を崩している場合は、医療機関で診察を受け、加入している健康保険の窓口に相談してください。事実と異なる症状を申告する必要はありません。
方法③|職業訓練による給付の延長を確認する
再就職に向けてスキルを身につけたい場合は、職業訓練も選択肢になります。
雇用保険の基本手当を受給できる人が、ハローワークから公共職業訓練などの受講指示を受け、所定の条件を満たして訓練を受ける場合、通常の所定給付日数が終了した後も、訓練終了まで基本手当の支給が延長されることがあります。
これを「訓練延長給付」といいます。
訓練の種類や受講期間、受講指示の有無、受講開始時点の支給残日数などによって、給付延長の対象になるかどうかが変わります。受講手当や通所手当が支給される場合もあります。
また、自己都合退職で給付制限がある場合でも、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練を受講すると、給付制限が解除されます。
つまり、職業訓練を活用することで、通常の所定給付日数を超えて、長期間にわたって失業給付を受けられるケースはあります。
ただし、職業訓練に申し込めば誰でも給付が延長されるわけではありません。
訓練期間が長いことだけを理由に、必ず給付が延長されるわけではありません。
受講する訓練や個別の受給条件を確認する必要があります。
職業訓練を検討している人は、申し込み前にハローワークで受講指示の対象になるか、給付の延長が見込めるかを相談しましょう。
【職業訓練を【受講指示】で受ける条件と5つのメリットを徹底解説】
退職給付金サポートを契約する前・契約した後の対処法
契約前に確認する手順とチェックリスト
広告を見て不安になった場合でも、その場で申し込む必要はありません。
次の順番で確認すると、契約すべきか判断しやすくなります。
- STEP 1|広告の根拠を確認する
- ✓ 「300日」「300万円」などの数字について、対象者・受給条件・計算方法・支給時期を確認します。
- STEP 2|公的窓口で自分の条件を確認する
- ✓ ハローワークや加入している健康保険の窓口で、利用できる制度と申請条件を確認します。
- STEP 3|サポートサービスの内容を確認する
- ✓ 何を代行・支援するのか、担当者の資格、料金体系、追加費用などを確認します。
- STEP 4|契約書と解約条件を確認する
- ✓ 途中解約の可否、違約金、返金条件を確認し、不明点が残る場合は契約を急がないようにします。
- STEP 5|必要性を比較して判断する
- ✓ 公的窓口で自分で手続きできる部分と、有料サポートを利用することで得られる具体的な支援を比較します。
契約前に確認したい項目は、次のとおりです。
「最大300万円受け取れるか」だけではなく、「自分はどの制度の対象になるのか」「サポートにいくらかかるのか」を先に確認しましょう。
すでに契約してしまった場合
契約した後に不安を感じた場合でも、一人で抱え込む必要はありません。
まずは契約書・利用規約・広告の画面・事業者とのメッセージ・支払記録などを保存してください。
そのうえで、解約条件や請求内容を確認します。
解約を申し出た際に高額な違約金を請求された場合や、事実と異なる申請を指示された場合は、消費生活センターなどの公的窓口へ相談しましょう。
消費者ホットライン188では、最寄りの消費生活センターなどを案内してもらえます。
契約トラブルは、事業者とのやり取りを記録したうえで相談すると説明しやすくなります。
解約できるかどうかは、契約内容や取引の状況によって異なります。「契約したから絶対に解約できない」と決めつけず、書類を残して早めに相談しましょう。
ハローワークに相談するときの準備
ハローワークで制度を確認する場合は、手元にある書類を持参すると相談がスムーズになります。
基本手当の受給手続きでは、求職の申し込みや必要書類の提出などが必要です。持参物は個別の手続きによって異なるため、事前に管轄のハローワークで確認してください。
退職給付金サポートに関するよくある質問
- Q退職給付金サポートは詐欺なのですか?
- A
すべてのサービスが詐欺とは限りません。ただし、広告の表現だけで信用せず、契約内容やサポートの具体的な範囲を確認することが大切です。
「誰でも300日受給できる」「必ず受給額が増える」といった説明には注意しましょう。
300日という給付日数が認められる区分は実際にありますが、受給できるかどうかは公的制度の条件に基づいて判断されます。
- Q退職給付金サポートを利用せず、自分で申請できますか?
- A
はい。失業保険などの公的給付は、原則として本人が手続きを進められます。
申請方法や必要書類は制度によって異なるため、ハローワークや加入する健康保険の窓口で確認しましょう。
- Q「受給できなければ返金」と書かれていれば、安心して契約できますか?
- A
返金保証の記載だけで、安心できるとは限りません。
返金の対象となる条件や対象外となるケース、解約料、返金手続きなどは、契約内容によって異なります。広告の目立つ表示だけで判断せず、契約前に規約を確認し、不明点は書面などで説明を求めましょう。
- Qすでに契約し、高額な解約料を請求されています。どうすればよいですか?
- A
契約書、広告の画面、事業者とのやり取り、支払記録などを保存し、消費者ホットライン「188」に相談してください。
解約や返金が認められるかどうかは、契約内容や取引の状況によって異なります。
事業者の説明だけで判断せず、消費生活センターなどの相談窓口で対応方法を確認しましょう。
- Q病気で退職した場合、失業保険は300日もらえますか?
- A
病気で退職したというだけでは、300日にはなりません。300日になるのは、就職困難者に該当するなど、特定の区分に認定された場合です。
病気で退職した場合は、特定理由離職者に該当する可能性はありますが、これは給付日数ではなく、給付制限などの扱いに関係する区分です。
- Q傷病手当金をもらいながら退職するとき、気をつけることは?
- A
特に注意したいのは「退職日に出勤しない」ことです。
退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受けられなくなることがあります。ほかに、退職日までに1年以上の被保険者期間があることなども必要です。
退職日を決める前に、加入先の健康保険へ確認しましょう。
- Q自己都合で辞めた場合、失業保険はすぐにもらえますか?
- A
すぐには受け取れません。7日間の待期期間に加えて、原則1か月の給付制限があります(2025年4月の改正で、原則2か月から短縮されました)。
ただし、公共職業訓練の受講指示を受けた場合などは、給付制限が解除されます。
まとめ|広告の金額より、自分の受給条件を確認しよう
「退職給付金サポート」「失業保険300日」「最大300万円」などの広告を見たときは、金額や日数の大きさだけで判断しないことが大切です。
今回の記事のポイントを整理します。
退職後の生活費に不安があるときほど、「最大300万円」「すぐに受け取れる」といった広告に魅力を感じるかもしれません。
しかし、実際に受給できる金額や日数は、個々の条件によって異なります。広告の数字を一律に否定する必要はありませんが、自分がその条件に該当するかどうかは別の問題です。
高額なサポートを契約する前に、まずは公的窓口で自分の条件を確認し、利用できる制度や手続き方法を把握しましょう。それが、不要な出費やトラブルを防ぐ第一歩になります。
参考・出典
この記事の内容は、次の公的機関の情報をもとにしています。
制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。
【最終確認日:2026年10月25日】
